釣り人

今朝も雪。昨日とあわせて、40センチは積もったかな。
それでも日曜日のせいなのか、車が多い。週末だけ営業している
近所の喫茶店の周りに、10台近く停まっている。よく訊いてみたら、きょうが渓流釣りの解禁日なのだとか。

釣りはほぼ未経験に近い私だが、釣りと聞くと、神田の小料理屋
での飲み会を思い出す。なんのつながりだったのか、ほぼ女性ば
かりの集まりで、一緒に行ったふたりの友人以外は私にとっては
初対面の人ばかり。そこで恋愛話に花が咲いたのだが、私ともう
ひとりの友人だけが、みんなとは恋愛パターンが違うために話の
中に入っていけなかったのだ。

私も彼女も、誰かを好きになると、その人を崇めてしまい、その
人のレベルに近づきたいとがんばるのだが、その人がこちらを振
り返ろうものなら、その時点で失望してしまい、思いが冷めてし
まうのだ。え~、私ごときに振り返るような人だったの~、いや
だ~!と。それでは、恋が成就するわけはないと指摘されたが、
まさにその通り。

私たちは、追いかける行為を楽しんでいたのだ。手に届かないも
のを追い求め、夢を見ることを楽しんでいたのだ。
まったく、男を振り回す失礼な女だとも指摘された。そう言われ
れば、そうだったのか。自分のことを追いかけてくる女がいると
思って振り返ったら、「きゃあ、いやだ~」と逃げていくんだか
ら、失礼といえば失礼だ。

それでも、そのとき私たちはふたりだけで納得しあっていた。
「釣りに例えたら、私たちは誰もいないところでずっと釣り糸を
垂らしているのかも知れない。みんな、あっちの方が釣れるよっ
て、どんどん移動していっても、頑なに同じ場所でがんばってる。だって、他の場所で釣れても意味がないのよ、ここで釣れなくちゃ。ここで一生釣れなくても、それはそれでいいの。」
こんな私たちを、周りの先輩女性たち(それもすてきな)は理解
不能と言っていた…。

あれから何年たったのか、一生釣れないと思っていた私に、今は
つれあいがいる。ひとつだけいえるのは、人間、同じパターンを
繰り返していては成長がないということだ。でも、きっと同じこ
とを繰り返していく中で、なんらかのブレイクスルーが起きるの
かも。

こんな寒い雪の朝から、じっと川の中で釣り糸をたらす人もいる。いったい、釣れるのか釣れないのか知らないけれど、結果に関わらず、これを楽しいと思う人がいるのだ。私は「おじさん、がんばってね!」と心の中で声をかけながら、夫の運転する車で買い物にでかけた。

釣り人

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