ひとり暮らし

この夏前から、ずっと近隣の町の息子さんのところに行ったきりだった
隣のおばちゃんが久々に帰って来た。私たちがここに越してくる少し前
に、おばちゃんは長く看病していたご主人を亡くされ、体力・気力とも
がくんと落ちたようだ。田舎で不便なひとり暮らしを続けるおばちゃん
を心配して、息子さんが呼び寄せたらしい。

確かに、移動手段もない老人が、昔ながらの家で昔ながらの生活を送る
のは大変だろうと思う。その上、冬の寒さや自分の健康状態を考えたら
不安になるはずだ。去年の秋が訪れたときも、おばちゃんは「秋は寂し
いねぇ」とこぼしていた。

前回、お盆に戻ってきたおばちゃんに、息子が「もう体、元気になった
の?」と声をかけると、おばちゃんは「やさしいねぇ」と涙ぐんだ。私
の母と同い年のおばちゃんを見ていると、他人事とは思えない。さらに、
長年連れ添った連れ合いを亡くした喪失感はいかばかりのものだろうか。
当たり前のことながら、どんなに幸せな夫婦にも、いつかは必ず別れが
訪れるのだ。

おばちゃんは明日の選挙に行ったら、また街に行ってしまう。

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