NHKは一億総白痴化を狙っているのか!?

ネットの時代になってから、新聞・テレビ等の既存の大手メディアへの信頼がガタ落ちしているが、去年あたりから不信感はいっそう増しているように思う。私も一時は既存メディア偏向ぶりや間違いを探すために新聞やテレビのニュース番組をチェックしていたこともあったが、すぐに疲れてしまい、とっくに新聞も購読しなくなり、地上波のテレビも滅多に見なくなった。

とは言っても、朝や夕方などは食事の準備をしながら、時計代わりにニュース番組をつけている。夜の7時前になると、なんとなくチャンネルはNHKにして、天気予報とニュースをざっとチェックするのだが、近年、気になるのがNHKテロップひらがなが多いこと。「普通、漢字で書くだろ?」と思うような単語も平仮名交じりで表記されていてビックリする。そのたびに家族で、「なんで、これが漢字じゃないの?」と話し合うのだが、「常用漢字ではないから」という理由だけではなさそうだ。だって、「明日」も「あす」と表記されていたのだから。

昨晩、気になったのは「腹腔鏡手術」を「腹くう鏡手術」と表記していたこと。ネットで検索すると、「腹腔鏡手術」の表示が普通であり、「腹くう鏡手術」で出てくるのはNHKの「腹くう鏡手術」のニュースに関する記述くらいのものだ。つまり、「腹くう鏡手術」と表記するのはNHK以外にはほぼいないということ。

では、なぜ一般的に「腹腔鏡手術」と表記されている言葉を、をわざわざ「腹くう鏡手術」と表示しなければいけないのだろう? 漢字が難しいから? 読み方がわかりにくいから? そうだとしても、ニュースを聞いていれば、アナウンサーが「ふくくうきょうしゅじゅつ」と読み上げているわけだし、それでもわかりにくいと思うなら、ルビを振ればいい。私が子供の頃は、NHKニュースで難しい言葉が出てきたら、「さっきの言葉、どういう意味?」、「あの漢字、なんて読むの?」などと親に聞いたりしたものだ。そうやって子供は言葉や漢字を覚えていくものではないのか!? それに、たとえ読み方がわからなくても、見ただけでなんとなく意味が推測できるのが表意文字である漢字の利点なのに、それを表音文字平仮名にしてしまってはどうしようもないではないか。親切というよりも、国民の向上心を摘んでしまいたいのか!?と邪推してしまう。

それから、ニュースに出てくるインタビュー映像の字幕も気になる。文字数の関係で、実際に話している言葉を短くせざるを得ないのはわかるが、たとえばその人は敬語で話しているのに、字幕ではそうなっていないと、かなり印象が変わってくる。もちろん耳では「敬語」を聞いているのだが、文字のイメージの方が脳に強く焼きつく気がするのだ。字幕である程度の印象操作はできると思うので、安易に字幕を使うのは怖いなぁと思う。(NHKに限らず、テレビのテロップ捏造はよくある話だ。単なる間違いではなく、意図的では?と思う事案もたくさんある。有名なのは、東京都知事だった石原慎太郎氏の発言をTBSが捏造した事件。→ウィキペディアにも「石原発言捏造テロップ事件」で載っている。)

NHKこそ、率先して難しい漢字も使っていってほしいのに、日本国民の総白痴化を狙っているのかと疑ってしまう。パソコンのおかげで、ただでさえ、私も「読めても書けない漢字」が増えているのに…。

私が子供の頃は、NHK放送終了時に日の丸の映像が映し出され、君が代が流れていたのに。私が中学か高校の頃は、NHK教育渡部昇一先生がレギュラー出演していらしたのに。そもそも私はNHKの番組で先生の存在を知ったのに、昨年、亡くなられた際にはテレビのニュースで訃報に接することはなかったように思う。(すべてのニュースを確認したわけではないけれど) NHK(を始めとするメディア)はいつ、どこでこんな風に変わったのか。戦後日本の平和な時代の中でも、知らない間にいろんなことが起きているのだ。

ネットの時代になって、その事実がわかったことだけでも良かったと思う。とりあえず、漢字は大切だよね。

男子フィギュア金銀の快挙、ハレルヤ!(パトリック・チャン)


(↑『Hallelujah』by Jeff Buckley)

平昌オリンピック、リアルタイムでは全然見ていなかったけど、きょうの午後の男子フィギュア、フリースタイルは第四グループからしっかり見てしまった。あとで最初から見ておけばよかった…と思ったけど、リアルタイムで羽生結弦選手、宇野昌磨選手の演技を見て、ふたりが1、2位となって喜ぶ姿を見られたので大感激。

それから、もうひとつ嬉しかったのは、カナダパトリック・チャン選手の演技も見られたこと。フィギュアファンでない私でも、パトリック・チャンは昔からおなじみの選手だ。まだ頑張っているんだなぁと喜んでいたら、プログラム使用曲にまた感激。最近はヴォーカルつきの曲もOKになったとかで、彼が選んだのがカナダのソングライター(&詩人)、レナード・コーエンの名曲、『ハレルヤ』。しかもジェフ・バックリーのバージョン!

レナード・コーエンによるオリジナル・バージョンは1984年に発表されたそうだが、私が初めて聴いたのは、その10年後の1994年に発表されたジェフ・バックリーのバージョンで、てっきりこれはジェフ・バックリーのオリジナルだと思っていた。それくらい、ジェフ・バックリーのバージョンは名作中の名作と言われていたのだ。(もちろん、レナード・コーエンのバージョンも味わい深くて素晴らしいのだが。)どうもジェフ・バックリーのおかげで、この曲は有名になったらしい。とにかく、たくさんの人がカバーしているし、一般人も好んで歌う曲らしい。ドラマ等の挿入歌としてもたびたび使われている。(『NCIS』でも流れたなぁ。)

レナード・コーエンは2016年に82歳で亡くなったが、ジェフ・バックリーは1997年にわずか30歳で他界。しかもメンフィスでのレコーディング中に、ミシシッピ川で溺死という突然の出来事だった。当時、このニュースが入り、追悼の意味もこめて『ハレルヤ』が流れていたことを覚えている。

そういえばニルヴァーナカート・コバーンも、亡くなる何ヶ月か前のMTVアンプラグドで最後に演奏したLeadbellyの『Where Did You Sleep Last Night?』が、ジェフ・バックリーの『ハレルヤ』と同様に鳥肌モノだった。

あとで知ったのだが、私が見逃してしまったパトリック・チャン選手のショートプログラムの選曲は、カンサスの『Dust in the Wind』だったそうだ。ああ、見てみたかった。

それにしても、レナード・コーエンも、ジェフ・バックリーも、カート・コバーンも、みんなもうこの世にいないなんて。
All we are is dust in the wind.
この曲の歌詞のとおり、私たちは風に舞う塵のようなものなのだ。

ちなみにこちらがレナード・コーエンの『ハレルヤ』。コーエンはユダヤ系だが、日本の臨済宗で得度していたそうだ。

デペッシュモードはどうして来日しないのか?


(↑*90年のワールドツアー時、パリのラジオではこの曲がヘヴィローテーションで流れていた!)

リュクサンブール公園で偶然に出会った友人とは、お互いにデペッシュモードが好きということで仲良くなったのだが、なぜか日本ではデペッシュモード、昔も今もさほど人気がないようなのだ。私自身、年を経るごとに最新の音楽シーンには疎くなっているのだが、デペッシュモードは現在も活動を続け、まさに今もワールドツアー中だというのに来日の予定はない。

私は1983年の初来日公演を2回、観に行ったのだが、そのときも会場はニューラテンクオーターピテカントロプスという小さなライヴハウスだった。(2005年11月27日の日記参照)その後、85年、86年、88年、90年と来日しており、東京での公演会場は厚生年金会館中野サンプラザNHKホール、そして最後は武道館だったようだ。というのも、私は初来日以降、彼らのライヴを見たことがないのだ。なぜ大好きなデペッシュモードのライヴに行ってないのか、自分でも思い出せない。(90年はパリにいたので無理だったのだが)

イギリス本国はもちろん、ヨーロッパやアメリカでも、影響力は同世代のU2ほどではないにしても、スタジアム級の大物バンドとしての地位を確立しているデペッシュモードなのに、日本は90年以降、一度もツアーしていないなんて、寂しすぎる。90年代に、東京の音楽業界の人に「どうしてデペッシュモード、来日しないんですか?」と訊いたら、「彼らのワールドツアースタジアム用にセットが作られているけど、日本ではスタジアムでライヴできるほどの人気がないから、無理」ということだった。

サウンドはダークでヘヴィーだけど、ポップで切ないメロディ。倒錯したファッションもするけれど、みんなイケメン。音楽面でもルックス面でも日本で人気が出る要素はきっちり揃っているはずなのに、どうして昔からビッグじゃないのか、不思議でならない。日本人と感性が似てそうなドイツ人には、めちゃくちゃ人気なのに・・・。

長年、活動する中で、ドラッグやアルコール依存症、精神不安定、自殺未遂、離婚、バンド内の不仲など、いろんなトラブルや問題を抱え、乗り越え、年を重ね、見た目もだいぶ老けてきたようだけど、デペッシュモードとしていまだに活動していることだけでも、ありがたく思う。曲作りを担当しているマーティン・ゴアは天才だと思うし、デイヴ・ガーンのダンスは最高にセクシー。元気なうちに、もう一度、ライヴを見たい!

*関連記事「デペッシュモード、初来日でサインもらったなぁ!

リュクサンブール公園追記ー私の妄想

リュクサンブール公園で「走るダニエル・デイ=ルイス」に遭遇したとき、私と一緒にいたのはフランス企業に入社したばかりの若いイギリス人だった。といっても彼は東欧系移民2世で、出身国の言葉も堪能だったようだ。オックスフォード大学出身の長身のエリートで、アルマーニのスーツはこういう人が着てこそ、映えるのだなぁと感心したものだ。でも中味は新卒ほやほやで、まだまだ若いなぁ青いなぁと、すでに20代後半だった私は微笑ましく思っていた。職場のイギリス人チームのほかのメンバーからは「若いくせに生意気だ」と嫌われていたけど、「移民」目線のある彼は、ほかのイギリス人にはないシンパシーを東洋人である私に示してくれていたので、私はけっこう仲良くしていたのだ。親しくなって、いろいろ話をしてみると、理系のインテリのくせに実は予知夢など、けっこうスピリチュアルな体験をいくつもしていたのでビックリ。人って、わからないものだ。

オックスフォードでは、彼が在籍していたカレッジに秋篠宮様が留学されたので、当時はカレッジのパーティなどでご一緒したらしい。「Prince Ayaはとてもいい人だったよ」と話していた。同じくオックスフォード在学中に、MI6にスカウトされたこともあると話していた。東欧の言語ができるエリートだから、目をつけられたのだろう。

そんな彼とは、日本に帰国直後は連絡をとっていたのだが、いつのまにか互いに音信不通になった。彼に限らず、留学時代の多くの知り合いとはしばらくの間、疎遠になっていたのだが、SNSが普及するようになって昔の知り合いとネット上で再会することが多くなった。フランス企業のイギリス人チームのメンバーとも、滅多に連絡を取り合うわけではないが、お互いにどこにいて、何をしているかくらいはわかっているので、何かあれば連絡はとれる状態だ。ところが、この東欧系の彼だけは、ネットで検索しても、一切みつからない。どのSNSでも、みつからない。東欧系の珍しい名前なので、本名を名乗っていればすぐにみつかりそうなのだが、みつからない。

もしかして、名前を変えたのだろうか!? でも、両親の母国を誇りに思っていた彼が、わざわざ本名を変えるだろうか!? もし変えるとすれば、素性を隠して別人にならなくてはいけない、なんらかの任務を負っているのだろうか!? たとえば、MI6の諜報員として…!? 
と、私の妄想は広がるのでした。

でも本当に、どこに消えたんだろう・・・!?

*スパイといえば、ケンブリッジ・ファイヴガイ・バージェスをモデルにした『アナザー・カントリー』を思い出すけど、AXNミステリーで見た『ケンブリッジ・スパイ』も面白かった! マギー・スミスの息子、トビー・スティーブンスキム・フィルビー役だ!

リュクサンブール公園にダニエル・デイ=ルイス

あのあとイポリット・ジラルドについて調べていたら、広島を拠点に活動している諏訪敦彦氏と『ユキとニナ』(2009年)という作品を共同監督していた。イッポ広島と繋がっていたなんて…。

で、昨日の続き。話は学生時代に遡る。英米のバンドの来日公演を見たい一心で広島から東京の大学に進学した私は、洋楽好きの広島時代の同級生と一緒によくコンサートを観に行った。そのうち同じく洋楽好きの彼女の友人とも知り合い、音楽の趣味が似ていたので、何度かコンサートに一緒に行った。私も彼女も、Depeche Modeが大好きだったのだ。

その後、私がパリ行きを準備していた頃、彼女もヨーロッパを一ヶ月ほど旅行する予定と聞いて、「パリで会えたらいいね」なんて話していた。それからしばらくして、ようやくパリに落ち着いた私は広島時代の同級生に新たな連絡先を知らせたが、Depeche Mode好きの友人はすでに旅立っていて、私の連絡先を渡せなかったと返信があり、パリでの再会は夢と消えた。

と思っていたのだが、ある日、日本人の友人とリュクサンブール公園を散歩していたら、後ろから「厚子ちゃん?」と声をかけられ、振り向いたらDepeche Mode好きの友人が立っていたのだ! 結局、うちに泊まってもらい、何日か楽しく過ごし、友情を深めることになった。

その後、私は留学先のカリキュラムの一環で、インターンシップとしてフランス企業にしばらく勤務した。フランス語が不自由なせいもあって、イギリス人チームの中で働いていたのだが、ある日、その同僚のひとりとリュクサンブール公園を散歩していたら、目の前を長髪のダニエル・デイ=ルイスが走って行った。それも猛スピードで。わりと寒い時期だったように記憶しているが、確かランニングシャツだったと思う。(一瞬のことで、自信はないけど。)

ダニエル・デイ=ルイス!?」と思わず声を出したら、私の性格をわかった上でか、「落ち着いて。彼に声をかけないように」と同僚は私を制した。実際にはあっという間に走り抜けていったので、声をかける間もなかったのだけど、しばらくすると再び猛スピードでダニエル・デイ=ルイスが現れ、長い髪をなびかせて走り去った。「なんなんだ、これは!?」と思いながら、散歩の間、何度も走るダニエル・デイ=ルイスを見た。当時はイザベル・アジャーニと付き合っていると聞いていたから、パリにいるのは不思議じゃないけど、なぜあんなに髪を伸ばし、しかも猛スピードで走り続けていたのか、不思議だった。

帰国後、ダニエル・デイ=ルイス主演の新作映画を観に行って、その謎は解けた。新作のタイトルは、『ラスト・オブ・モヒカン』。この中で長髪のダニエル・デイ=ルイスが猛スピードで走っていたのだ!! リュクサンブール公園でもモヒカン族になりきって(!?)走っていたとは!!! 噂通りの徹底した役作りに取り組んでいたんだなぁ。

*ちなみに日本では今年5月公開予定の『ファントム・スレッド』で、ダニエル・デイ=ルイスは俳優を引退するそうです。

映画『愛さずにいられない(un monde sans pitié)』日本語字幕版放送キボンヌ(←死語!?)

1989年、フランス語もわからないのにパリに渡った私が、フランス語がわからないまま映画館で見たフランス映画エリック・ロシャン監督
の『愛さずにいられない(un monde sans pitié)』。そこら中にこの映画のポスターが貼ってあって、それで見たくなったんだっけ!? アパルトマンの近くには映画館がいくつもあって、週末になると夜遅くまで上映していたので、言葉がわからなくても映画はたまに見に行っていたのだ。田中好子主演の『黒い雨』や、江戸川乱歩原作の『屋根裏の散歩者』も、近所の映画館で見た。たぶん日本にいたら、見ることはなかったかも知れない。

で、この映画。イポリット・ジラルド演じるチンピラのようなチャラ男、イッポが彼とは住む世界が違うインテリ女性に惚れてしまうという恋愛ドラマ。イッポみたいな男は好みのタイプではないし、現実世界ではけっこうムカつくキャラだと思うけど、俳優さんの魅力のせいなのか(!?)、なんとなく目が離せなくて、キザな振る舞いもプッと笑えてしまう。フランス語はわからなくても、パリの街と、めくるめく恋の空気が感じられるだけで、うきうきしてしまう映画だった。

妙に気に入って、しかも内容をきちんと知りたかったので、帰国後に日本の映画館に再度、観に行ったように思う。ビデオも持っていたはずだけど、何年も前にビデオやレーザーディスクはすべて処分してしまった。その後、この映画のことを思い出し、もう一度観たいと調べたけれど、残念ながらDVD化はされていないようだ。YouTubeにはオリジナル版がアップロードされているが(これ違法!?)、私は日本語字幕版をもう一度観たい!! DVD化は無理でも、どこかの有料映画専門チャンネル放送してくれることを切に願う!!

といっても、正直言えば、私にとって、この映画の内容はたいして問題ではなかったのだ。私が何度も思い出すのは、パンテオンがどか~んと映るところから始まるオープニングのシーン。パンテオンからリュクサンブール公園近くのカフェ(Le Rostand)が映り、イッポが闊歩する通りもなんとなく見覚えがあるような気がして…まさに私の生活圏が舞台だったので、忘れられない作品だったのだ。

オデオンからリュクサンブール公園方面に向かう途中に、(たぶん)ベトナム華僑が経営する安くておいしい中華屋さんがあり、そこでセットメニューを食べるのが、映画館に行くのと同じくらい当時の私にとってはささやかな楽しみだった。スープは必ず酸辣湯。ああ、あの酸辣湯をもう一度、食べてみたい!
おしゃれな映画から中華の話になってしまったけど、次回はリュクサンブール公園の思い出について書こうと思う。
(*ちなみに2010年7月5日の日記でも、このお店に触れている。)

ちなみに、もうひとつ、この映画で忘れられないシーンがある。イッポと彼女が、夜、窓からエッフェル塔を眺めていて、イッポが指を鳴らすと、エッフェル塔の灯りが消えるという・・・。ね、キザでしょ!? 笑っちゃうでしょ!? でも、そこがいいんだなぁ、不思議なことに。ああ、イッポ、現在、62歳。どっひゃ~。

今さらながらの『ツインピークス』


*毎朝、我が家にやって来るスズメたち。

アメリカで1990年に放送されて大ヒットとなったデヴィッド・リンチ監督のドラマ『ツインピークス』。日本でも、特におしゃれな業界人などの間で話題になっていたと記憶している。実は私が念願の転職を果たして、初めて翻訳したのが『ツインピークス』でローラ・パーマーを演じたシェリル・リーのインタビューだった。なのに私は、この作品を見ていなかったのだ。

でも、この最初の翻訳仕事は印象に残っている。「人間は、社会的に自分が置かれたポジションをわかっている。大抵の人間はそこまで強くないので、そのポジションに対して社会が期待するとおりの人間になろうとする」というようなことを、シェリル・リーが話していたのだ。なんとも深い話ではないか。よほどシリアスな物語なのか…と思って、私はツインピークスを敬遠したのだろうか。

その『ツインピークス』の放送が、先日からWOWOWで始まった。今回はしっかり録画して、家族全員で見ているところ。息子も昨夏、アメリカ研修中にデヴィッド・リンチのことを知り、興味を持ったらしい。まだ全30話の半ばまでしか見ていないのだが、私の感想は一言。

「ツインピークスって壮大なコメディだったのね!」

娘のローラが殺されて嘆き悲しむ母、そして父の姿は、あまりに異常すぎて、私は声を出して笑ってしまった・・・。ツインピークスは架空の町だが、ワシントン州のカナダ国境に近い場所という設定のようだ。この町全体の少しとち狂った感じ、どこかで見た気がする…と思ったのだが、これって、ニルヴァーナカート・コバーンの狂気の世界に似ているような…。彼もまた、ワシントン州の小さな町の出身だった。

う~む、これはかなり深くてシリアスなコメディなのかも。

*まもなくツインピークスの25年後を描いた『ツインピークス The Return』の放送も始まる。これには、NINトレント・レズナーも出演するとか。うう…楽しみ。

「アンダーコントロール(under control)」付記

1月22日の日記で、「The situation is under control」について触れたところだが、AXNミステリーでイギリスのドラマ、『検視法廷シーズン2』(2016)を見ていたら、またこのフレーズが出てきた。事件の調査のために資料館に行かされた部下が、上司(主人公)からの電話を受けて、

It’s under control

と答えていたのだ。字幕は「ちゃんとやってます」、だったかな? 実際には、資料館に着いたばかりで、まだ何もしていないんだけど。アメリカのドラマでも、同じような状況でこのセリフが使われていたことから考えても、このフレーズは少なくとも日常会話においては、「現時点では解決の糸口すらみつかっていないけれど、それに向けて努力している」状態で使われるのかな。文字通りの意味より、軽い感じ!? 

IOC総会のスピーチで安倍首相が「福島はアンダーコントロールだ」と嘘をついたと批判した日本の(一部の)人たちは、このフレーズを文字通りの意味で受け止めすぎていたということかも!? 外国語のニュアンスを正確に理解するのは、難しい。

イヤーワーム(earworm)な『オドループ(oddloop)」byフレデリック


*寒さのあまりじっと寄り添う3匹の金魚。

中学の頃、洋楽に目覚めて以来、ずっとアメリカやイギリスのロックが好きで、ただただ来日したバンドのコンサートを見たいという一心で東京の大学に進学した私。だけど子供時代にピアノレッスンも早々に脱落し、歌もいまいちで、音楽は聴くことしか能がない。
夫は高校時代にバンドを組んでギターをやっていたというので、息子も高校生くらいでバンドを始めることを密かに願っていたのだが、ロックは「うるさい」と言って興味を示さない。小学生の頃、合唱団に入っていたので歌うことは好きなくせに、カラオケもほぼ行かない。「息子のライヴを観に行く」のは見果てぬ夢となった。

なので、私は息子の学校の文化祭で、(ほぼ)毎年、「よその息子さんのライヴを観に行く」のである。ほとんどが知らない人の息子さんだけど、高校生バンドは初々しくて、微笑ましくて、青春していて、羨ましい! 中にはとても上手い人がいたりして、感心、感動したりもする。

去年は特に、可能な限りずっとライヴ会場に居座って、たくさんのバンドを観た。今ではほとんど音楽を聴かなくなり、最近の音楽もまったく知らないので、今の若い世代の音楽を知る機会となった。あとで演奏曲目を教えてもらって、ネットで本物のオリジナルバージョンを調べて(YouTubeって、ありがたい!!)、いま人気のバンドをいくつか知ることができた。昔と違って、いまは日本のバンドも海外のバンドも音を聴いただけでは区別できない。すごいなぁ。

そんな中、いくつものバンドがライヴ演奏したことで耳に残っていた曲が、フレデリックの『オドループ』。もう3年前の曲らしいのだが、知らなかった。(ユニクロのCM曲だったとか!?)最初は歌詞が気になっていたんだけど、YouTubeで本物のPVを見たら、なんだかはまってしまって、この曲のPVを繰り返し再生していた。耳には残るけど、すごく素敵な曲と思っていたわけではなかったのに、なぜか気になって、また見たくなって聴きたくなって、気がついたら病みつきになっていた。誰かが「これ、なぜか5回見ていた」と書き込みをしていたけど、まさにそう。なんだかウィルスに感染したみたいに、やられてしまうのだ。

とまあ、このような症状が私に現れたのは昨年9月だったのだが、そのときは遠くから「なにをそんなに聴いてるの?」と不思議そうにしていた夫が、最近、『オドループ』のPVを見ているのを発見。しかもその後、何度か繰り返して見ているではないか。ははは、夫も感染するぞ~と思っていたら案の定。5回見たら、完全に病みつきになってます。

なんなんでしょうね、この感染力。恐るべし、フレデリック

イヤーワーム(earworm)とは、「歌の一部などが頭の中で反復して、音楽が頭にこびりついて離れない状態」。元々は16世紀に「ハサミムシ」のドイツ語を英訳した言葉だったらしい。ハサミムシは、眠っている人の耳の中に入って害をすると考えられていたんだって!

雪の日がますます寒くなる~『トラップ 凍える死体』

かなり寒い日が続きますが、厳寒の季節にふと思い出すドラマがあります。

AXNミステリーで見た『トラップ 凍える死体

これ、アイスランドのドラマです。アイスランドのドラマなんて見たことないから、「どんなんかな~!?」という好奇心で見たのです。

アイスランドといえばビョークというエキセントリックなシンガーを思い出しますが、それ以外にも私は山奥の過疎地に住んでいた頃、まるで魔法使いのようなミステリアスなアイスランド人ご夫婦に遭遇したことがあり、私の中では勝手に「おとぎの国」のようなイメージが出来上がっていたのです。

ところが、このドラマ。ただ延々と暗くて寒いんですよ。首都レイキャビクから遠く離れた田舎の小さな港町にデンマークからのフェリーが到着すると同時に海に浮かぶ死体が発見されるのですが、吹雪のため交通が遮断されて、首都警察からの応援も来ず、誰もその町から出られない状態で、事件の捜査が始まるのです。しかし田舎の警察の人員はわずかに3名。物語は、警察署長のアンドリという熊みたいなおっさんを中心に展開していくのですが、こんな田舎町なのに、デンマーク人やらリトアニア人やらアフリカから人身売買で連れてこられた女性やら、意外と国際的なのです。ま、私も山奥の過疎地でアイスランド人に遭遇したくらいですし。(これについては、2009年4月13日の日記を参照)

悪天候で孤立状態の町の中で、なぜか次々に事件が起きるので、アンドリは大忙しなのですが、外があまりに寒そうで、移動するだけでも大変そう。陽も射さないので、雪と氷の世界なのになんとなく薄暗く、みんなの服装も地味(制服や防寒着だから仕方ない)。致命的なのは、北欧というと長身で紅毛碧眼の美男美女を想像するのに、出演者に美形がひとりもいないこと。「これはドキュメンタリーか!?」と思うような顔ぶれです。(敢えて、そういうキャスティングをしているのでしょうか!?)主人公のアンドリは、前述したように熊のようなおじさん。ただし、真面目で誠実なキャラクターですが。

なので、これ、華やかさが1ミリもないドラマなんです。ジョークもないし、笑顔になれる場面もない。ネタばれになることは書きませんが、真面目で誠実なアンドリは最後まで報われません(これもネタばれ?)。なんなのだ、このドラマは!

ま、このドラマの効用があるとしたら、とにかく寒いってことでしょうか。実は私と夫は、このドラマ、夏に観たのです。暑い夏の日の夜に、暗くて寒いアイスランドのドラマを見るのは乙なものでした。ただただ暗くて寒くて地味なドラマの展開に、とうとう私たちは笑うしかなく、「アンドリ?」と嫌がらせのように互いに呼びかけておりました。

今でも夫が突然、「アンドリ?」と言うと、思わず笑ってしまいます。えらく長いこと効果が続くドラマですね。コメディじゃないのに、我が家の定番ジョークとなってしまった「アンドリ」。やはりアイスランドは不思議な国です。

by 鳩胸厚子