前世の因縁(!?)

きょうは一日こもって仕事をしていたので、また過去の不思議話を。

東京の小さな出版社に勤めていた頃、編集の方から突然、取材について来てほしいと頼まれた。それも通訳として。「ええっ、そんなの聞いてないよ…」と実力のない私は恐怖にかられつつ(だって普段は事前に資料や質問をもらって準備するのに!)、「すぐそこですから」と言われるまま、近くの小さなホテルに徒歩で向かった。

ホテルのカフェで待っていたのは、細身で背がやけに高い、ボンデージ系の怖そうなお方。けれど、立ち上がって手を差し出す彼と握手をしたとき、なぜかわからないけど「この人、知ってる」と思ってしまった。話してみると、外見のハードなイメージと違い、とても穏やかな知的な人で、スムーズに取材は終了。同行編集者が日本人スタッフと事務的な話を始めたので、私たちもごく自然に雑談を始めたものの、途中、彼が席をたってトイレに行った隙に編集者の話が終わり、私は彼に挨拶もせず、そそくさと帰社してしまった。

会社に戻ってからも、「この人、知ってる」と思ったのはなんでだろう?ともやもやしていたのだが、夕方6時すぎに、私は大急ぎで会社を出た。待ちに待った美輪明宏のリサイタルの日だったからだ。遅れては大変と小走りしていたら、さっきのホテルの玄関にボンデージの彼の姿が見えた。ちゃんと挨拶もせずに帰ったので声をかけようかと思ったが、そのときの私は美輪明宏の方が大事だと、そのまま会場まで走り続けた。

リサイタルは期待通り、愛と感動に満ち溢れていた。閉演後、夕食の席で友人たちとリサイタルの感動を語り合った。美輪明宏の愛のメッセージが強烈で、「そうよ、愛よ、愛よね。人生、愛よね~!」と、私はすっかり盛り上がっていた。

翌日(土曜日)、目が覚めてからも、昨夜の高揚ムードは続いていて、「昨日のボンデージの彼にちゃんと挨拶しておけばよかった~」という気持ちから、気がついたら、私はあのホテルに電話をしていた。オペレーターから「お部屋におつなぎします」と言われたときに初めて我に返り、私は何をしているのだろうと後悔し、電話を切ろうと思ったら、彼の声が聞こえた。どうしよう~と思いつつ、「昨日お会いした者ですけど」と言いかけると、「ああ、話の続きをしたいと思っていたんだよね~」と、彼はそのまま昨日のカフェに戻ったかのように話し始めた。

そして、彼の滞在中に何度か会う機会を持ったのだが、最初に感じた不思議感はずっとつきまとった。こちらの心の中を見られているような、話さなくても通じているような感覚があるのだ。例えば、「スケジュールも詰まってるだろうから、次に会う機会はいつになるかな~」と思い、訊いてみようかな~と頭の中で必死に英作文をして、頭の中でその英文を復唱していたら、「いま、なんて言った?」と訊かれてビックリ。騒々しいイベント会場だったけど、もちろん私は声には出していなかった。それから、一番好きな音楽を訊かれ、これを言うと馬鹿にされるだろうと思いつつ正直に答えると、彼もそれが一番好きだと言うので驚いたことも。(そして、その素晴らしさを語り合った。)

彼の帰国後も何度かハガキや電話のやりとりがあり、海外で会おうと計画を立てていた。ところがある日、夢の中で彼の声が聞こえた。「本当に申し訳ないんだけど、用事が入って、その日程では会えなくなった」と。間違っても英語の夢なんか見たことのない私が、その日ははっきり英語で喋る彼の声が聞こえたのだ。そうしたら、その数日後、急なスケジュールが入ったので、日程変更して欲しいと彼から電話があった。彼にとっては(私が聞いても、すごい!と思う)喜ぶべきスケジュールだった。

ともかくも、前世でなんらかの因縁があったのだろうか…と思う人だったが、同時に「この人と関わると危険に巻き込まれそう」という直感もあり、最終的にその人との縁は消滅した。

その翌年、職場の同僚に無理やり勧められて、高尾学館だったか、算命学の本部のようなところで鑑定してもらった際に、こんなことを言われた。「あなたはねぇ、珍しい星で、今までの人生で辛いこと、まったくなかったでしょう? 大丈夫、これからも、まったくないわよ~。何があっても、辛いと思わない星なのよ~。だから、今のまま、頑張らないで、楽~に生きていっていいのよ。ただし、ひとつだけどうしても頑張って、頑張って、頑張らないと叶わないことがあって、それが結婚。もし結婚したいなら、結婚活動だけは必死で頑張りなさい。あとのことは頑張らなくていいから。本当はね、去年、縁談があったはずよ。でも、それ、断って正解。お互いがどんなに好きで結婚しても、回りから絶対引き離される縁だったから。去年、結婚しないでよかったわよ~。」

結局、私にとっては、前世の因縁よりも、夫と出会って結婚したことの方が奇跡的な出来事なのでした!!!

*近所のわんちゃん。あまりにも気持ちよさそうで。
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