卑怯者(小学校のガキ大将の思い出)

前原外相辞任だと。こんなにあっさり自分から辞めてしまうのは、これ以上、表に出されては困ることがいろいろあるからだと勘ぐってしまう。しかも、前原氏への同情を引くような報道が多いことが、さらに怪しい。私が信頼している番組ですら、きょうは前原擁護に徹していた。(その理由は、なんとなく想像できるんだけど。)

私は霊感はないくせに、直感と感情で動く人間だ。前原氏は「口だけ番長」と言われているそうだが、私も、彼のおどおどした目を見た瞬間に、「こいつと喧嘩したら、私でも勝てる!」と思えてしまった。逆に、西田議員はクラスでも一目置かれる存在だったのではないかと思う。

私の故郷は「仁義なき戦い」の舞台であったせいなのか、日常生活の中で明らかにヤクザさんとわかる方々を見ることがあった。小学校の同じクラスには、そういう人の子供も含め、やけにガラの悪い奴がけっこういた。けれど、クラスの番長のおかげで、弱い男子も女子も、ガラの悪い連中からいじめられるずに済んでいた。たとえ、いじめられかけていても、誰かが番長に告げ口(?)すると、「われ、やめちゃれーや」と止めに来てくれるのだ。

ところが、番長とはいうものの、この男子、見た目はおぼっちゃんだった。身長も高く、上品な、いいところの坊ちゃん風。女子にも、優しい。まったく怖い感じはしないのに、彼に歯向かう男子はいなかった。

私もクラスの中では身長が高く、バシバシものを言う方だったので、彼とは仲良くしたり、喧嘩をしたりしていたのだが、ある日、どういう経緯だったか、彼ともうひとりの男子が下校時に私の家までついて来た。私がどんな家に住んでいるか見てみたい…ということだったと思う。その頃、我が家はおんぼろ借家に住んでいたので、私は必死で「ついてこないで」と訴えたのだが、とうとう我が家についてしまった。私はかぎっ子だったので、留守宅に男子が二人、上がりこんでしまい、どうしようと思っている間に、ふたりは私の机の上の日記帳をめざとくみつけてしまった。

私は「ダメ~!」と日記帳を隠したのだが、それで余計に「見せ~や!」となってしまい、とうとう日記帳を取られてしまった。実は、この日記には、どうしても誰にも知られたくない秘密を書いていたのだ。その秘密とは、「大正2年生まれの父が今もふんどしを愛用していること」。今思えば、なんともないけど、小学生の女子にとっては死ぬほど恥ずかしい秘密だったのだ。

そもそもは、チンピラみたいなガラの悪い男子が私の家を見に行くと言い出したせいで、彼のお目付け役のような形で坊ちゃん風の番長が一緒について来てくれていたので、とられた日記帳を彼が返してくれるのでは…と期待していたのだが、番長も好奇心に負けてしまったのか、私の日記帳をぱらぱらとめくって、ふと目を留めて読み始めた。

私はてっきり父のふんどしのことを知られたと思い、「恥ずかしい!!」と思っていたら、番長はものすご~くショックを受けた顔で、私にこう言った。「○○、わし、卑怯じゃったか?」 「え!?」と、私は一瞬、なんのことかわからなかったが、彼が読んでいたページを見ると、どうやら私が彼のことを名指しで批判していたらしい。クラスでちょっとした事件があり、彼が仲裁役のようなことをしたのだが、それを不公平に感じた私が、「××君って、卑怯だ」と書いていたのだ。番長の逆鱗に触れた…と内心びくびくしていたら、彼は静かに、「ほうか~。わし、卑怯じゃったかのぅ」と反省するかのように言う。彼にしてみれば、よかれと思ってやったことを、第三者から卑怯と見られていたことがショックだったのだろう。

私はふんどしのことがばれなかった安堵感もあったのか、番長が他人の批判に素直に耳を傾ける人であったことに驚き、それ以来、彼に一目置くようになった。翌日、チンピラ風の男子は「○○の家、ぶちぼろじゃった」と言いふらしたようだが、番長は私の家に行ったことについては、何も言わなかった。

あの日を境に、私はチンピラ男子をさらに大嫌いになり、授業中に私を見ていることに気づくと、「ガンつけんな」とばかりに睨みつけてやった。逆に、あれ以来、番長とは卒業まで仲良くしていたが、私が女子校に進学したため、親交はなくなった。

大人になって知ったのだが、彼は単なるお坊ちゃんではなく、えら~いヤクザさんの息子だった。どおりで、誰も歯向かわなかったわけだ。けれど、彼には回りを納得させる公平さ、謙虚さ、優しさがあった。本物の番長とは、そういうもんだと思う。

ちなみに、うちの母も言っていた。「何歳になっても、町で出会ったら、ちゃんと挨拶して、『○○ちゃん、元気ですか?』と訊いてくれる男の子は、あの子くらいじゃった」と。私の大学受験で、一緒に東京に来た母は、新宿の交差点でその番長とすれ違い、そのときも明るく挨拶してくれたらしい。

今頃は、もしかして、りっぱなヤクザさんになっているのだろうか!? だとしたら、民主党には献金していないことを願うばかり。
(よく考えたら、広島のヤクザさんは反山口組系だから、民主党に献金なんて、あり得ないか。広島のこのマイナーさ加減が好きだ。)

*散歩途中にみかけたお家。こういう小さな家が好き!
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