そこまで言って委員会(増刊号):武田教授(後半)

「たかじんのそこまで言って委員会 増刊号」(3月19日放送)の武田教授のお話の後半部分です。
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*予断を許さぬ状況の福島第一原発、付近住民は安全をどう守ればいいのか?

放射能は風で流れるわけですよ。放射能は、皆さん、四方八方に行くと思っている。そうじゃない。放射能というのは物質ですから。ガスとかミストですから。微粒子ね。だからドーンといったら、風に流れていくんですよ。この原子力発電所で事故が起こったら、どこに放射線が流れるという計算はあるはずなんです。なければ困るんです。事故対策やってないことになる。20キロ四方(の住民)を逃がすなんて、無意味なことなんです。円を示してもダメなんですよ。例えば福島原発でいま3月に事故が起こったら、大体どっち方向に飛散するという計算値はね、これはもちろんみつかりませんよ、たぶん、だけど、なきゃおかしい。なきゃおかしいけど、ない可能性もある。なぜかと言うと、住民側から考える人がいないから。ただ逃げろと、こう言うだけですからね。チェルノブイリのときに、もうわかっていた、我々専門家は。チェルノブイリの例があるから。あのときは全部風下がやられたんですよ。ある幅で。ずっとそれがポーランドくらいまでいったんですよ。殆ど同じ幅で。ま、少し広がるけど。気象庁は、いま、風の計算できるわけですよ。風上にさえいれば、安全だ。それは国際的には当たり前。でもこれも建前なんですよ。要するに、20キロ四方を逃がすと言って、風向きは言わない。なぜなら風は変動するから。それで変動しない無意味な数字だけ言うんですよ。だから僕は親戚から電話がかかってくると、全部ね、「風はこっち向いてるから、あなたのところはこうだ」と言う。朝のNHKの放送で、面白いこと言ったんですよ。福島第一原子力発電所近くの風向計は壊れていると。上の方の仙台あたりと…北と南とで(風向計測)やってましたよ。事故の起こった次の日に、気象庁の部隊が行かなきゃいけませんよ。風向きが一番大事なんだから。そんな壊れてるなんて、4日もたって何言ってるんだと。風がどっちに向いているか、もし地震でこの中のが壊れたなら、気象庁がさっと来て、政府が言って、ここら辺、どこでもいいから風力計や風速計をつければね、もう完璧に言えるわけですよ。周辺の観測網を10個くらい作って、コンピュータで処理して、それで刻々とどっちに風が吹いてますと。それをなぜ出さないかというと、国民のことは考えてないんですよ、全然。スタンスが違うんですよ。だから私が原子力安全委員会の部会で、地震指針が出たときに、悲しい質問をしたんですよ。「この指針は原子力の建物を守るための指針ですか? 付近住民の被ばくを守る指針ですか?」と冒頭に訊いてるんです。なぜかというと、明らかに原子力の建物だけ守ればいいと思ってるんですよ。みんなはそのとき、どういう顔をしていたかというと、「なに武田先生、言ってるんだよ。原子力の建物が守れれば、守れるじゃないか」。違うんですよ。今度のことでよくわかったように、ポンプが壊れてもダメだし、津波が来てもダメだし、万が一漏れたときはどこに逃げるかというのもあるから。だから付近住民の目から見たときと、原子力をやる立場の人から見たときと、全然違う。

* まさか、原子力発電所までもが国民不在で進められていたとは。さらに武田先生は嘆きます。

ひとつだけ言わなきゃならないのは、僕から見たらどうしても不完全な地震指針を通そうとするから、もうしょうがないと。「それじゃ付近住民にオートバイと、子供にはヨウ素が飲めるように配って下さい」と僕が言ったら、やらないって言うんですよ。なぜなら、「安全が建前だから」。さっきの配管の問題と一緒なんですよ。原子力発電所を認めるというのは、安全だから。「逃げるためのオートバイを配ったり、ヨウ素を配ったりしたら、原子力発電所が事故を起こすことを認めることになるじゃないか」と。万全を期すと。いや、万全は期してないんですよ。でも万全を期しても起こることに用意すると、これが鉄則ですよ。万全を期さないで、且つ、起こることを予想しない。僕が意地悪で言えば、万全を期してないからね、やっぱり全部そういう体系になってるわけですよ。あと、どうしたら自分が逃げられるかと。責任から逃げられるかと、そこだけに焦点が合っている。

*そして最後に武田先生は、これまでに見たことのないほどの真剣なまなざしでこう語った。

原子力というのは、巨大技術なんですよ。原子力発電所の所長さんなんかに、ときどき会うんですよ。福島第一の人は会ったことないけど。要するにこれは、戦艦大和なんですよ。その重要さから言って。今度みたいなことにもなるし。原子力行政とか原子力発電所の責任者っていうのは、何が大切かというと、戦艦大和の艦長なんですよ。「俺は国民のために、これを動かすんだ。責任とって俺は(いざというときは)腹を切る」、こうガチッと思ってないと、ダメなんですよ。僕がウランの施設の所長をやってるときに、朝日新聞の記者が、「所長さん、この施設は安全ですか?」と来たんですよ。「もちろん、安全じゃなきゃ、やらない。なぜなら、ここで働いている部下が130人いる。(何かあれば)この人たちが真っ先に死ぬ。もちろん周辺の住民のことも心配しているし、私は危ないことは、やりません。あなたに訊かれる筋合いはありませんよ」と言った。そういう気持ちでやらないと、出来ないんですよ。サラリーマンじゃ、ダメなんですよ。隠そうとしたりするし。これをすると、せっかく所長になったのがダメになるとか思うから。やっぱり軍隊みたいな訓練を受けた、貴族みたいな人たちがやらないとダメ。官僚もそうなんです。つまり、万機公論に決する。そういう立場に立てる人じゃないと、ダメ。原子力発電をちゃんとやるためには、技術は一番大丈夫だから。みんなが間違ってるのは、技術がボロいからと思ってるから、いつまでも解決しないんですよ。そうじゃなくてね、人の心なんです。設計したりする人の心と、運転する人たち、そしてそれを見る人たちの覚悟。これが重要です。巨大技術というのは、そういうものを持ってるんです。

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