このブログにも、かつて何度か天使に遭遇した話を書いたことがあります。いや、正確には、私にとって天使と思える人に出会ったという話なのですが、あれは本当に人間だったのだろうか…と今でも不思議に思う存在でした。
実はこの間から『天使に会いました』(エマ・ヒースコート・ジェームス著、ラッセル秀子訳)という本を読んでいます。これは神学を専攻していた著者が、博士課程論文のために行った天使体験のリサーチを基に書かれたもので、天使に出会ったという体験談を一般から募集したところ、350ものエピソードが集まったそうです。
その中でもよくあるのが、何か困っている時に天使が助けてくれたり、危機的場面で救ってくれたというお話。誰もいない場所なのに、ふと誰かが現れて助けてくれて、気がつくとその姿は消えていた…というパターンです。それを読んで、昔、オーストラリア旅行で私が出会った人たちも、もしかして天使だったのかも知れない…と今になって気づきました。
もう20年以上前の独身時代のこと。運転免許をとったばかりの私は、ドライブ暦の長い友人と女2人旅に出かけました。オーストラリアのブリスベーンからシドニーまで、レンタカーで内陸部のルートを通って行くという1週間余りのドライブ旅行。宿はその都度、電話帳などでみつけたB&Bなどに電話で予約しました。オーストラリアは自然も人間も、とってもおおらか。いい意味での驚きがたくさんあって、心が解き放たれたような、すがすがしい時間を過ごしました。
「奥田民生の『イージューライダー』を大ボリュームで流しながら、荒野を走る」という、免許とりたての私の夢も、早速、実現しました。ワラビーの飛び出し注意の看板が立っている道路を、延々と走るのは爽快でした。ところが、ある日の夕方近く、これまでの何もない平地から山道に入り、建物もなにもない山の中をただ延々と走ることに。その景色が、初心者の私がよく走っていた京都の八瀬・大原に似ていたので、私はそこが慣れた道であるかのように錯覚して運転していました。確かに景色は似ていたけど、ひとつ違っていたのは、そこは舗装道路ではなかったということ。舗装道路しか走ったことのない私は、カーブでスピードを落としきれず、車を少しぶつけてしまいました。本当にヒヤリとしましたが、車は前の方が少しへこんだだけで、私たちに怪我もなく、そこからは友人が運転を代わってくれたのですが、すぐに異常が!そう、タイヤがパンクしていたのです。
いったいどうしたものか。一瞬、焦りました。これまで通過する車は1台もなく、しかもそろそろ夕方が近づいています。左手は山しかないし、右手は大きな牧場が広がっているようでしたが、建物は見えません。ところがその時、よく見ると、遠くに男性が2人見えたのです。どうやってその人たちを呼んだのか、もう記憶もさだかではありませんが、とにかくその人たちは私たちに気づいて、道路までやってきてくれました。事情を話すと、「タイヤの替え方、知らないのかい?」と驚かれましたが、2人は嫌な顔ひとつせず、手際よくさっさとスペアのタイヤをつけてくれました。そして、その日は金曜日だったのですが、「今週末は土日だけじゃなく月曜も休みだから、今のうちにガソリンを入れておいた方がいいよ。ここから何キロか先にガソリンスタンドがあるけど、もうじき閉まるから」と教えてくれたのです。私たちは本当に感激して、お礼を言って、ガソリンスタンドに向かったのですが、改めて思い出すと、あの人たちは天使だったとしか思えません。あの時、あの人たちが助けてくれなかったら、私たちはどうなっていたのか…想像したくもありません。
後日談。初心者の私の無謀な運転のせいで、こんなことになってしまって、友人には大変申し訳なかったのですが、このあと、友人も気持ちよく荒野を運転していたら、スピード違反の罰金を払うことになりました。いろんな経験ができて、楽しかった! ああ、あのおおらかなオーストラリアにもう一度行ってみたい!