生い立ち

友人の本作りを少しだけお手伝いしている関係で、彼女の
生い立ちを綴った文章を読んだ。高貴な家系に生まれ、大
きなお屋敷で育ちながら、家族関係は複雑で、安定した温
かい家庭には恵まれなかった。そんな幼い頃の彼女の思い
を想像すると、こちらまで胸がきゅんとなる。

きょうは彼女の家を訪れ、一緒に原稿をチェックした。途中、
彼女の生い立ち話に登場するご両親や継母、そして幼い頃の
彼女と弟さんの写真、それからお父さんの形見の品を、次々
と見せてもらった。

お陰で、彼女の物語がまるで映画のようにリアルに想像でき
て、ますます胸がきゅんとなった。この写真の少女が、いま
目の前にいる友人なのだ。ここに至るまでの彼女の長い道の
りを思い、なんとも不思議な気持ちに駆られた。

「これ誰の?」と、彼女のお父さんの形見の帽子を、無邪気
に被る息子さんの姿を、写真立てのお父さんが笑って見てい
るようだった。

*雨の帰り道、水墨画のような景色だった。
1207rdio

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