先日の参議院選挙以来、世の中では「NHKをぶっ壊す!(笑顔)」のNHKから国民を守る党が話題になっているが、我が家では相変わらずNHKニュースのテロップの漢字表記について疑問が噴出している。
既に2018年2月18日の記事『NHKは一億総白痴化を狙っているのか!?』で、「腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)」をNHKが「腹くう鏡手術」と表示したことに触れた。ネットで検索しても、「腹くう鏡手術」という表記は、NHK以外にはほとんど見当たらないはずだ。
その後、気になったのは、「妊よう性の温存治療」という表記。そもそも「妊よう性」という言葉を聞いたことがなかったので、「なんなのこれは!?」と思い、調べてみたら「妊孕性=妊娠すること、身ごもること」とのこと。この単語を検索してみると、「妊よう性」という表記を採用しているのは、「国立がん研究センター」の「がん情報サービス」くらいだ。がん治療の際に出てくる重要な言葉のようだが、医療系のサイトには「妊孕性(にんようせい)」とふりがなをつけた表記が多く、これが一番親切だと思う。NHKといい、国立がん研究センターといい、その分野では国の中心的存在と思われる組織が、「妊よう性」などという奇怪な表記をするのは止めてほしい。
それから、最近、よく発射される北朝鮮の「飛しょう体」。「翔」が常用漢字じゃないから。ただし、「櫻井翔」は漢字でオッケー。人名だから。でも民放のニュースでは、「飛翔体」と表記しているはずだ。それを言うなら、宮中「晩餐会」も、NHKは「晩さん会」と表記した。「膠着」は「こう着」。でも、「語彙」は「語い」ではなく「語彙」のまま。「彙」が2010年に常用漢字入りしたらしい。しかしタンカーの「拿捕」は、なぜか「拿捕」の漢字表記に「だほ」とルビがついていた。何故なのか、よくわからない。
それから混乱するのが「抽せん」。先日、「東京オリンピック観戦チケットの抽せん申込」を報じた際に、背景に映る東京オリンピックの公式ホームページには「抽選」と書いてあるのに、NHKのテロップは「抽せん」となっていたのだ。民放は「抽選」と報じていた。「ちゅうせん」という言葉は、本当は「抽籤」と書くのだが、「籤」が常用漢字でないため、「抽選」と代用漢字を用いることが多いが、国会の議事録や全国自治宝くじ事務協議会は、NHKと同じく「抽せん」という平仮名との交ぜ書き表記にしているそうだ。(ちなみに、私が「抽籤」が本当の表記だと知ったのは、林修先生の本を読んだとき。さすが林先生だ!!) そこは理解したとして、不思議なのが、「抽せん」の結果が「当選」、「落選」と表記されていたこと。なぜ「当せん」「落せん」ではないのだろう!?
しかも、今朝のNHKのローカルニュースでは「抽選」というテロップが。これは単なるチェックミスか!?
その後、この問題について話していたら、子供が「こんなのがあるよ」とネットでみつけてきたのが、『放送研究と調査』という資料だ。NHKの放送用語委員会の会議録やアンケート調査などが、ネットで見られるのだ。少し昔のものだが、委員会でもメンバーによって意見がかなり違うし、アンケート調査では、現場のアナウンサーが実は平仮名との交ぜ書きではなく、漢字表記を好む傾向にあるらしいことがわかったり、なかなか興味深かった。
これによると、「放送における漢字使用」については、常用漢字とNHKが独自に使用を決めた漢字を使うとある。しかも、常用漢字表にあってもNHKの判断で使わないものもあるし、表外字であっても特例として使うものもあるとのこと。つまり、常用漢字以外は絶対ダメというわけではないのだ。そもそも、この時の委員会の会議は、表外字も使って放送表現の幅を広げていくため、これまでの漢字の使用制限を見直すことがテーマだったのだ。
しかし、こういう問題にその場で即、答えが出るわけではない。結局、(もしかしたら)現場のアナウンサーの意見を無視して、奇妙なテロップを決めているのは誰なのだろう!? 委員会の中で、「放送は、年少者も含む多くの国民を対象にしている」から、「新聞界は表外字を認めて使用範囲を広げても、放送がそれより狭い範囲で表記することに非難されるところはない」といった意見を目にしたが、まさに公教育の論理と同じで、最低レベルに合わせようということだろうか!? 放送を視聴している年少者は、いつまでも年少者ではない。学習して成長していくはずだ。それなら、日本国民として恥ずかしくないレベルの国語を理解できることを前提として、ニュース番組を制作していいのではないだろうか。(だからこそ、子供ニュースみたいな番組を別に作っているんじゃないの!?)前述の意見を述べたのが、(たぶん)有名な日本語学者だということに、私はいたく失望した。日本語学者なら、正しい、美しい、そして格調高い日本語を、多くの国民に聞いてほしい、話してほしいと思わないのだろうか!? ま、いろんな人がいて、いいんだけどね。いやはや、いろいろ勉強になりました。ふぅ。
N国の立花さんほどじゃないけど、NHKに対して不満が募るきょうこの頃です。