年寄りの思い

車がないので、お昼は昨日のカフェで新しくメニューに載っていたタコライスを食べたいと思ったのだが、きょうは定休日だった。が~ん! そこで駅前の古い喫茶店に入った。実はものすご~く古いお店で躊躇したのだが、ほかに選択肢もなく時間の余裕もなく、入ったのだ。扉をあけたら意外と人がいる。しかも常連さんなのか、お客はかなりの高齢者。老人ホームに来たのかと錯覚したほどだ。(お店の方もわりとお年・・・)

メニューは典型的な喫茶店の軽食のみ、わりといい値段で、はっきり言って美味しくはない。だが息子はここでも漫画があったので満足して読みふけっている。私は週刊誌をめくりながら、店内のお喋りに耳をそばだてる。かなりご高齢のご婦人が、しっかりとした声で世相について喋っているのだ。今の政治家のふがいなさとか。「昔はね、東條さんがこう言ってたのよ。(と演説を口マネ)。頑張ってるな~と思ったわよ」などと。

その後、焦って老人ホームに駆けつけると、父はちょうどトイレの介助をしてもらったところで、洗面台の前に立っていた。ところが介助のおばちゃん2名が手を洗わせようとしても、頑として動かない。きれい好きの父は、普段はものすご~く丁寧に手を洗うのだが、きょうは完全拒否。その理由は一目でわかった。介助者が父の嫌いなおばちゃんだからだ。はっきり言えば、私もこの方は苦手である。ベテランの方なのだが、それゆえに何事もさっさと効率的に進めたいらしく、相手のペースに合わせないのだ。「なるべく楽に早く終わらせたい」というのがみえみえで、少々のことなら力づくで無理やりやらせるのだ。それで父が思い切り抵抗した場面を、私はよく覚えている。きょうも、そうだったのだろう。

決して水道にさわろうとしない父に、私が「じゃ、きょうはこれで手を拭いたら」とウェットティッシュを差し出すと、受け取ってくれた。それを見て、例のおばちゃんはここぞとばかりに「じゃあ、お願いします」と消えてしまった。もうひとりのおばちゃんは、彼女について研修している新人さんらしい。

昨日はいつもの優しいお兄さんたちがいたせいか、父の機嫌はよかったのに・・・。最近は問題ないようだが、かつて父がたまに不穏になることがあると施設長さんに言われたことがある。こちらの問題もあるとは思うが、スタッフとの相性も意外と重要なのかも知れない。

それでも父はきょうも手を振って、私たちを見送ってくれた。

帰り道、息子に、「じいちゃん、どうして不機嫌だったと思う?」と訊くと、「あのおばちゃんでしょ。わかってるよ。お母さん、絶対訊くと思った」と即答された。そして、こう続けた。「確かに嫌なおばちゃんだけど、ああいう嫌な人も、たまにはいなくちゃいけないんだよ。」

はぁ、なるほど。そういう人のお陰で、われわれも修行して成長できるというわけですね。

*実家近くの幼稚園では卒園式が行われたようだ。
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新幹線で、こんな本を読みました。

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