食パンにマヨネーズが初恋の味(これも小学校の思い出)

小学校のラブレター事件のついでに、初恋の思い出を。おませな私は、小学校1、2年生の時、同じクラスのM君のことが好きで好きで、家に帰っても、「私は将来、M君と結婚するから!」と毎日母に宣言するくらい好きだった。はっきり覚えていないけれど、それくらい好きだったんだから、たぶん学校でも、公言しないまでも、明らかにバレバレだっただろうと思う。

なぜM君のことが好きだったのか、実は今となるとよくわからないのだが、たぶん公明正大でものすごくまっとうな人だったから尊敬できたのだと思う。見た目は清潔感があって、感じよかったけど、ものすごくイケメンというわけでもなかったし、むしろ将来、サラリーマンになった姿が簡単に想像できるような、子供らしくない子供だったような気もする。だけど、真面目で、間違った言動をしない人だったのだ。

そのため、M君の前では思わず私もいい子ぶったりしたものだ。たとえば、学校の金網のフェンスが破れているところがあって、その穴をくぐると近道になるので、私も普段はそこを通っていたのだが、ある日、M君と一緒だった時、私はいい子ぶって、「この間、先生がこの穴を通っちゃいけないと言ったよね」と言って立ち止まった。しかし、M君は意外にも、「他人に迷惑をかけることならダメだと思うけど、この穴を通っても誰かに迷惑かけることにはならないから、大目に見てもらえるよ」と言って、穴を抜けて行ったのだ。「なるほど~!」と妙に感心して、私はますますM君を尊敬してしまった。

M君はうちの近所にある大きな会社の社宅に住んでいて、私も一度、放課後に遊びに行った。学校の募金活動にふたりで参加することになり、その準備だったのか、「じゃあ、きょうの帰りにうちに来れば」という経緯だったように記憶している。突然のことだったので、M君の家に行くと、お母さんも留守で、おやつもなかった。するとM君が、「うちではおやつがないと、これ食べるんだ」と、食パンにマヨネーズを塗って出してくれた。うちで母がサンドイッチを作ってくれることはあったけど、こんな食べ方は初めてだった。小学校低学年の私にとっては、この意外なおやつ、目からウロコの美味しさで、私はまたもM君を尊敬してしまった。

そして私の初恋は、2年生の席替えで最高潮を迎えた。いまどき、こんなことしたら批判が出るのではという気もするんだけど、担任の先生はどういう意図だったのか、教室の前に男子を一列に並ばせ、後ろには女子を一列に並ばせ、男女を向かい合わせて、隣の席になりたい異性を選びなさいと言った。当時は、ふたりがけの机だったので、男女のペアで席順を決めていたのだ。

もちろん私は大好きなM君のことしか頭にないのだが、みんなの前で手を挙げて、「M君がいいです!」なんて恥ずかしくて言えない…と心の中で葛藤していた。でも、もし一番に言えなくて、ほかの誰かが先にM君がいいと手を挙げたら、M君と同じ席に座れなくなる…。好きで好きでたまらないのに、みんなの前で恥ずかしくて言えないというこの気持ち…。どうしよう…としばらく悩んでいた。教室はし~んと静まり返って、まだ誰も手を挙げない。

ところがその時、M君が手を挙げて、「鳩胸さん!」と言ってくれたのだ。「すごい、クラスで一番最初に勇気を持って手を挙げるなんて!」と、私はまたもM君を尊敬してしまった。しかも、私を選んでくれたなんて。もう私は夢見心地で、M君と共に一番に席に座り、そのあとの席替えがどうなったのか、まったく記憶にない。(それにしても、担任の先生はどういうつもりだったんだろう!?)

しかし、こうやって成就した(!?)私の初恋は、3年生になる前にM君がお父さんの仕事の関係で他県に引っ越したことで、あっけなく終わりを迎えた。住所も聞いたように思うけど、そのまま疎遠に。それ以来、たまにおやつがない時は、食パンにマヨネーズを塗って、M君を思い出したものだ。ちなみに、その後、30歳を過ぎて夫と出会うまで、私の恋愛歴は暗黒の時代が続くのだけど、その話はまたいずれ。

*これは湖畔のカフェのフルーツフレンチトースト↓

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