ネットの時代になってから、新聞・テレビ等の既存の大手メディアへの信頼がガタ落ちしているが、去年あたりから不信感はいっそう増しているように思う。私も一時は既存メディアの偏向ぶりや間違いを探すために新聞やテレビのニュース番組をチェックしていたこともあったが、すぐに疲れてしまい、とっくに新聞も購読しなくなり、地上波のテレビも滅多に見なくなった。
とは言っても、朝や夕方などは食事の準備をしながら、時計代わりにニュース番組をつけている。夜の7時前になると、なんとなくチャンネルはNHKにして、天気予報とニュースをざっとチェックするのだが、近年、気になるのがNHKのテロップにひらがなが多いこと。「普通、漢字で書くだろ?」と思うような単語も平仮名交じりで表記されていてビックリする。そのたびに家族で、「なんで、これが漢字じゃないの?」と話し合うのだが、「常用漢字ではないから」という理由だけではなさそうだ。だって、「明日」も「あす」と表記されていたのだから。
昨晩、気になったのは「腹腔鏡手術」を「腹くう鏡手術」と表記していたこと。ネットで検索すると、「腹腔鏡手術」の表示が普通であり、「腹くう鏡手術」で出てくるのはNHKの「腹くう鏡手術」のニュースに関する記述くらいのものだ。つまり、「腹くう鏡手術」と表記するのはNHK以外にはほぼいないということ。
では、なぜ一般的に「腹腔鏡手術」と表記されている言葉を、をわざわざ「腹くう鏡手術」と表示しなければいけないのだろう? 漢字が難しいから? 読み方がわかりにくいから? そうだとしても、ニュースを聞いていれば、アナウンサーが「ふくくうきょうしゅじゅつ」と読み上げているわけだし、それでもわかりにくいと思うなら、ルビを振ればいい。私が子供の頃は、NHKニュースで難しい言葉が出てきたら、「さっきの言葉、どういう意味?」、「あの漢字、なんて読むの?」などと親に聞いたりしたものだ。そうやって子供は言葉や漢字を覚えていくものではないのか!? それに、たとえ読み方がわからなくても、見ただけでなんとなく意味が推測できるのが表意文字である漢字の利点なのに、それを表音文字の平仮名にしてしまってはどうしようもないではないか。親切というよりも、国民の向上心を摘んでしまいたいのか!?と邪推してしまう。
それから、ニュースに出てくるインタビュー映像の字幕も気になる。文字数の関係で、実際に話している言葉を短くせざるを得ないのはわかるが、たとえばその人は敬語で話しているのに、字幕ではそうなっていないと、かなり印象が変わってくる。もちろん耳では「敬語」を聞いているのだが、文字のイメージの方が脳に強く焼きつく気がするのだ。字幕である程度の印象操作はできると思うので、安易に字幕を使うのは怖いなぁと思う。(NHKに限らず、テレビのテロップ捏造はよくある話だ。単なる間違いではなく、意図的では?と思う事案もたくさんある。有名なのは、東京都知事だった石原慎太郎氏の発言をTBSが捏造した事件。→ウィキペディアにも「石原発言捏造テロップ事件」で載っている。)
NHKこそ、率先して難しい漢字も使っていってほしいのに、日本国民の総白痴化を狙っているのかと疑ってしまう。パソコンのおかげで、ただでさえ、私も「読めても書けない漢字」が増えているのに…。
私が子供の頃は、NHK放送終了時に日の丸の映像が映し出され、君が代が流れていたのに。私が中学か高校の頃は、NHK教育に渡部昇一先生がレギュラー出演していらしたのに。そもそも私はNHKの番組で先生の存在を知ったのに、昨年、亡くなられた際にはテレビのニュースで訃報に接することはなかったように思う。(すべてのニュースを確認したわけではないけれど) NHK(を始めとするメディア)はいつ、どこでこんな風に変わったのか。戦後日本の平和な時代の中でも、知らない間にいろんなことが起きているのだ。
ネットの時代になって、その事実がわかったことだけでも良かったと思う。とりあえず、漢字は大切だよね。