私たち家族は、子育ての場所としてこの田舎の集落を選び、移り住んできたのですが、私たちよりもっと上の世代で、ここに移り住んでくる方もあります。定年後に、田舎で畑仕事などをして、暮らしたいという方々です。また、別荘を買ってたまに遊びに来る方や、週末だけの喫茶店などを始める方もいます。
しかし、この土地に定住するのではなく、たまに訪れるだけの人は、やがてだんだんと足が遠のいていく確率が高いようです。うちの近くの何軒かの家も、別荘として近隣都市の団塊世代の方々が入手されたようですが、お姿を見るのは一年に数えるほどしかありません。車でわずか一時間の場所でも、日々の生活に追われると、まとまった時間は取れないのかも知れません。
それにしても、りっぱな伝統的家屋も、住人がいない状態では、みるみる荒れて朽ちていきます。夏には家の回りに草が生え放題、冬に雪が降っても、雪かきをする人もありません。今年は暖冬で助かっていますが、これからの季節、また近くのおばあちゃんたちがこの空家同然の別荘の草むしりをすることでしょう。うちの夫も草刈り機を持って、この家の回りを何度もきれいにしています。持ち主の方は、きっとこんなこともご存知ないのでしょう。
この界隈で週末だけ営業していた店舗も、現在、3軒が売りに出されているとのこと。病気になったり、年をとったり、それぞれやむを得ぬ事情があったようですが、「平日は都会で、週末は田舎で」という生活も、なかなか思うほど簡単にはいかないものかも知れません。
本書では「リタイアメント・プラン」を作ることを提唱していますが、「団塊世代の田舎暮らし」も、経済面はもちろんのこと、時間のプランをじっくり考えた上で実行に移した方がいいのかも知れません。