変わらないもの

首都圏で雪が降ったとニュースで取り上げていたが、
ここも今朝は雪。といってもベタベタ雪が数センチ
積もっただけ。昨晩から、ちょっと暖かくなったよ
うで、過ごしやすい。

先日、恋愛を釣りに例えた話をしたが、その話で盛
り上がった友人から、久々に電話があった。彼女は
私が東京に見切りをつけて中国行きを準備していた
10年前、阪神大震災を見て、「人生いつ何があるか
わからない。やりたいことは今やっておかなければ」
といきなり会社を辞めた。そして、海外旅行などし
て自由を満喫していた矢先、突然、脳溢血で倒れた。

運良く一命を取り留めたものの、身体的にも記憶や
言語にも多少の障害が残った。文章に長け、書物や
映画・映像作品の知識が豊富だった彼女が、文字を
読めなくなっていた。

退院して半年後の彼女と青山のカフェで会ったとき
のことは、今でもはっきり覚えている。彼女は突然、
こう言った。「昨日ね、私は病気になって、一番の
武器であったはずの言葉を失ってしまったんだとふ
と気がついて、落ち込んでしまったの。」

普通の人が聞いたら言語障害とは思わないほどスム
ーズだろうが、昔の早口の彼女を知っている私には、
少しテンポの遅い話し方だった。それでも、彼女の
表情はまったく落ち込んでいるようには見えない。
私は思わず、笑ってしまった。「○○ちゃん、もし
かして、その事実に昨日まで気づいてなかったの?」
「そう!」と、彼女も笑った。

それだけで、彼女はすごい。前日の落ち込みもその
日のうちに解消したそうだ。障害があったとしても、
彼女の気持ちの上では障害になっていない。彼女は
昔も今も、なにものにも捕らわれない自由な心、ま
っすぐ前を向いた心を持っている。

彼女は最近、以前の会社に復帰して、テレビ番組の
制作に携わっている。いまだに言語障害が残ってい
るというが、彼女の感性に変わりはない。電話の声
も、変わらず明るかった。

はた

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