夏の終わり

きょうはもう広島を離れる日。親戚にも友人にも、わずかの時間だが会うこと
ができた。老親も、思った以上に元気で安心したが、これも孫の存在が大きい
のかも知れない。

今回は、普段は無口な父が饒舌に過去のことを話してくれた。過去といっても、
主に戦時中のこと。軍属として満州で働き、その後、徴兵されて沖縄経由で南
大東島に行かされた父は、「日本人は悪いことをいっぱいした」と繰り返した。
まるで自分は日本人ではないかのように、「日本人は悪い!」と。ひねくれ者
の父は、最初から国家なんか信用していなかったのだろう。はっきり言えば、
うだつのあがらない、落ちこぼれの父は満州でも、戦地でも、現地の人の視線
で軍を見ていたようだ。

しかし人生、何が幸いするかわからない。父は小柄で体が弱かったために、戦
争末期まで徴兵されなかった。あのまま終戦時まで満州にいたら、無事に帰国
できたかわからない。徴兵されて送られた南大東島では、戦闘など皆無で、ふ
んどし一丁で芋畑を作る日々だったという。これが沖縄本島だったら、生きて
帰れたか怪しいものだ。しかも、故郷を離れていたことで原爆も免れている。

父は生き運があるのだろうか。あのストレスをためない性格は、たいてい晴れ
ている故郷の青い空、穏やかな海に育まれた影響もあるのかしらん?

きょうの帰りも、故郷では降っていなかった雨が、近畿に入ったら降り始めた。
(写真は夜の高速道路)

kousoku

“夏の終わり” への2件の返信

  1. 人間前向きに生きるのが良いよね。素敵なお父さんですね。
    此れからの日本にとっても戦争が悪かったと認める教育が必要な気がする。

  2. 戦争という非常事態になると、人間どうなるかわからない…こういうときにこそ、その人の本質が出るのかも知れません。だからこそ、怖いんですね・・・。

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