晴れて気持ちのいい土曜日。夫はいつも通り出勤し、息子は合唱団の練習に出かけたのに、私の仕事はなかなか進まない。ふぅ。
奇跡話ついでにパリのことを思い出すきょうこの頃。私は、パリを魔法の街と呼んでいた。街の不思議な空気が、日々の暮らしに魔法を呼び込んでいるような気がしたからだ。
そのひとつの例が、広島時代の同級生との再会だ。中高6年間を共に過ごし、仲のよかった友人がいた。東京の同じ大学に進学したので、その後も仲良くしていたのに、ある日、突然、絶交の手紙がきた。もともと、私が彼女にいじられる関係だったので、なんで私の方が絶交を言い渡されたのか、よく飲み込めなかったが、今風に言えば、私のことがうざくなったということだったと思う。
しばらくして、彼女は大学を休学して、ヨーロッパに留学したと風の便りに聞いた。その後、広島時代の同級生に聞いても、彼女と連絡をとりあっている人はいなかった。
それから7年後、私はパリに暮らしていた。その日の朝はすぐ近所の銀行まで支払いに行くため、化粧もせず、どうでもいい格好で外に出た。路地の角まで来たところで、アジア系の美女が表通りをさっそうと歩いて行く姿が見えた。きれいな人だなと思いつつ、どこかで見たような…。もしかして、7年前に絶交された親友かも…。
確かめたいと思いつつ、万一、本当に彼女だったとしても、絶交を言い渡された身としては、無視されるだけかも…と不安がよぎる。でも、やっぱり声をかけなきゃ。と思い切って、後ろからその女性を追いかけ、「すいません!」と日本語で声をかけた。
女性は振り返って私を見ると、驚いた顔で私の名前を叫んだ。次いで、「なんで、ここにおるん!?」とお互い、訊いていた。私が留学中であることを告げると、彼女もイギリスに留学していたという。その留学期間を終え、日本に帰る前に何日かパリに立ち寄り、まさにその日の夕方、成田行きの飛行機に乗るのだと。
結局、お互いの用事を終えて、その日の午後、改めて会う約束をした。そこで互いの7年間の出来事を話し、またの再会を約束して、私は彼女を見送った。手を振る彼女の目は、涙でうるんでいた。
これを機に、私たちはまた連絡をとりあうようになり、私の帰国後も東京で親しくつきあっていた。けれど、彼女も海外を行ったり来たり、私も中国に留学してしまったりで、今はまた連絡が途絶えている。
次の魔法を心待ちにしているのだけど、パリに行かないと、無理かしら!?