子供が通うミッション系の学校では、毎年、クリスマスタブローが行われる。とても大がかりな行事で、キリスト教の信者でない私も神聖な空気と、真摯な生徒たちの姿と、すばらしい音楽に毎年、感動してしまう。私の母校もミッション系で、毎年、クリスマスタブローがあったのだが、これほど大規模でもなかったし、私自身、積極的に参加したことがなかったので、ぼんやりとしか覚えていない。いや、それどころかクリスマスタブローというと、悲しい思い出が蘇るのだ。
中学2年の頃、スコットランド出身のBCR(ベイシティローラーズ)というバンドに夢中になった私は、同じくBCRファンの同級生と仲良くなった。その年の12月、彼らが初来日することになり、私たちは大阪公演のチケットをなんとか手に入れた。公演日は2学期の終業式で、しかもそのあとにクリスマスタブローがある。夕方までに大阪に行くためには、終業式のあとすぐに出発するしかない。そこで私たちは、それぞれに理由をつけて早退するつもりだったのだが、あまりにはしゃぎすぎていたのだろうか。その計画がどこからか先生に漏れて、コンサート行きを阻止されてしまったのだ。
そのときのショックと言ったら…。まさに「クリスマスタブロー、うらめしや~」である。入手したチケットは無駄になったけど、私はそのまま自分のBCRアルバムに記念として貼り付けた。結局、BCRは次の来日公演で見ることができたし、私はあの日、早退しなかったお陰で、中高6年間の皆勤賞をもらったので、めでたしめでたしなのだが、一緒にコンサートに行く予定だった友人とは、その後、高校の途中からBCR熱が冷めるのにあわせて疎遠となった。そして社会人になってからの同窓会で、彼女の訃報を聞いた。確か3人のお子さんを残しての、突然の事故死。
彼女が好きだったレスリーには、日本人の奥様がいて、今年もそして来年も来日公演があるらしいのだが、私にはいまBCRについて語り合える人がいないと思うと寂しい限りだ。