母の旅立ち

昨日、病室を出るとき最後に私が母にかけた言葉は、「ぐっすり寝てね」。この間までしんどくて、夜もあまり眠れない日が続いていたと言うから。そして、私の言葉通り、母はぐっすり眠ってしまった。

病院から電話がかかったのは、金曜日の深夜近く。時計が零時を回ってから、母は永遠の眠りについた。一足先に病院に着いていた友人が、葬儀屋さんに電話をしてくれた。前々から母は下見をした上で、こじんまりした近所のホールで家族葬をしてほしいと彼女に伝えていたのだ。

うまい具合に母の希望のホールが空いていて、家族3人、母と一緒にそこで朝まで過ごした。これまた母の希望通り、夫が枕経をあげてくれた。不思議と涙はまったく出ない。今までの経過をずって見ていたら、これが自然の成り行きだと納得できたからだろうか。

朝になって、ホールの支配人さんがいらして、葬儀の相談が始まった。何から何まで準備されていて、こちらは殆ど何もしなくていいシステムだ。しかも、こちらの気持ちを考えて、本当に親切な対応をしてくださる。これは支配人さんの人柄に拠るところが大きいのかも。

映画『おくりびと』は見ていないけど、湯棺と化粧をしてもらって、母は生前より(!?)美人になった。若くてやさしい女性スタッフに、こんなにきれいにしていただいてありがたい…と思っていたら、あとで夫が「あの人の腕には根性焼きの痕があった!」と妙に感心していた。

病院の方々もそうだけど、ホールのスタッフの方々にも感謝してもしきれない気持ち。世の中には、こんなに大切な仕事があるのだなぁ…としみじみ思う。

*母は瀬戸内海沿岸で生涯を過ごしたのだった。
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