別れの季節

先週はわずか10軒程度のこの集落で二回、法事があった。おととしと
去年のこの時期に近所のおじさんが二年続けて亡くなったからだ。

同じく、おととし、去年のこの時期にふたりの親しい友人のお父さん
が亡くなった。そして、今年。田舎の母校の先生の訃報を聞いた。

生物担当で、教頭先生でもあったその先生は、私が尊敬する数少な
い先生のひとりだった。ある日、生物教室の掃除中に、友人がビー
カーを落として割ったとき、教室に入ってきた先生は開口一番、
「怪我はなかったか?」と確認し、「こんなところに出しっ放しに
していた私が悪かった」と反省した。

先生の言動にひそかに感動した私は、理数系が大嫌いなくせに、
生物だけはそれ以来、がんばって勉強したのだった。(だからって、
生物が得意科目になったわけではないが。)

多くの故人を偲んで、心も湿っぽくなるきょうこの頃。心は常に乾
かさないようにしたい。咄嗟のときに、その人の本質が現れるのだ
ということも肝に銘じたい。

*隣の家のお地蔵さん。

jizo

育てること

家の中の用事もなかなか片付かないけど、午後からは庭に出た。
すると、隣のおじさんから紅花とひまわりの苗をあげると言われ、
急遽、花壇造り。丹精こめて数々の花を育てているおじさんに、
いろいろ花作りについて教えてもらう。

「手をかけただけ、育ってくれる。文句も言わないし。子供はこ
うはいかないからね。」組織や人付き合いが苦手だというそのお
じさんは、夕方、うちの夫を誘いに来た。焼き鳥で酒を飲もうと。
近所の男連中で集まるらしい。

こうやって、少しずつ地域になじんでいくのだろうか。あとで夫
から、あのおじさんには25歳の息子がいること、だけどその息子
は葬式以外でここの家には姿を見せたことがないらしいことを聞
いた。おじさんが植木にかける情熱の裏には、複雑な背景がある
のかも知れない。

*早く自分の庭の写真が撮れるようになりたい…。
しろは

ハンギングバスケット

きょうは朝から雨の中、街に出て用事をいくつかすませた。
そして、午後は「ハンギングバスケット教室」なるものに参加。
庭を一から造るのは無理そうだから、せめて寄せ植えでも…と
初体験。知り合いもいない生協の催しだったが、行ってみると、
地元の催しで顔見知りになった方々がいらした。

誰にでもできることでも不器用な私。ま、花が育てば、それな
りに見栄えがするだろう…と自分を納得させた。それよりも、
なによりも、地元の方々の心配は吊るした寄せ上を鹿に食べら
ないようにすること。確かに。

やっと雨がやんだ。明日はちょっと庭仕事できるかな。

きりや

空色の指先

うちの子が夢中になっている『レジェンズ』。TVアニメの放送が
終了したので、その後は本やゲームやパズルで必死になっている。
そして、最近手に入れたのが『レジェンズ』のCD。

ゲームは、夫が欲しくて買ったのだが(子供はゲームなんてもの
の存在すら知らなかったのに)、今回のCDは私が欲しくて買って
しまった。それも、ただ一曲を聴きたいがために。

それが最終回で流れた『空色の指先』。子供が最終回を見たあと、
泣いていたのでビックリし、さらにそのビデオを見た夫も泣いて
いたのでもっとビックリし、ストーリーなどまったく知らない私
も一緒にもう一度、見てみたのだ。

話はよくわからなかったけど、その私も、この曲が流れた途端に
じ~んとして、思わず涙が浮かんでしまった。音楽を聴いて涙が
出るなんて、久しぶりのことだったので、それ以来、どうしても
この曲をフルコーラスで聞きたかったのだ。

念願かなって、やっと入手したCD。青い空を見ると、この曲が頭
の中で流れてきます。が、実際に聞こえてくるのは、うちの子の
ちょっと外れた歌声。このところ、ずっとこの歌の練習中です。
とほほ。

指先

手間と愛情

「愛犬草」として売っていた虫除け植物の苗を、犬小屋のそばに
植えたのだが、早速、愛犬が掘り起こし、跡形もなくなっていた。
どおりで、きょうのウンチが黒っぽい土色だった。

近所のお庭を見たり、園芸好きのおばの話を聞くにつけ、やはり
友人宅の庭に咲く花はどれも特別大きく育って、きれいだと実感。
友人に言わせると、コンポストの違いらしいが、やはり彼女が植
物にかける「手間と愛情」の賜物だと思う。彼女は植物とコミュ
ニケーションできる人なのだ。

これって、子育てにもそのまま当てはまる。もちろん、ほかのこ
とにも。わが身を振り返り、しばし反省。

*うちの庭は撮るべきものがないので、きょうも友人の庭の写真。

べにわ

ぜにあおい

友人宅の美しい庭に触発されたこともあるが、近所の方々が普段
から草むしりに精を出しておられるのに比べ、我が家はあまりに
草ぼうぼうなので、きょうが休みの夫に草刈機で庭をきれいにし
てもらった。

そしたら、この間、植えたはずのラベンダーがなくなっていた。
雑草に埋もれていたのだから、仕方ないか。
ほかにも、埋もれながら辛うじて生きていた植物を植え替えたり、
新しく買ってきた苗を植えていると、近所のお年寄りたちが寄っ
てくる。「ナスを植えるか?」「土生姜はどうだ?」などと、皆
さん畑をやることを薦めてくださる。でも今の怠惰な私では、無
理、無理。

うちの庭の真ん中に、大きな花が育っている。去年も咲いたが、
今年も。ネットで調べたら、「ゼニアオイ」というそうだ。あち
こちに生えているが、この一本だけは巨大。さすがの夫も草刈機
を当てなかった。結局、うちの庭では勝手に生えてきたこのゼニ
アオイだけがりっぱに育ち、一番目立っている。

ぜにあおい

女の楽しみ

きょうは朝から、電話が続いた。
久々のお喋りに、ストレス発散。これが女の楽しみね。

それですっきりしたせいか、夕飯はいつもより豪勢に、
品数も増やした。ああ、おなかいっぱい。これも女の
(というより、私の)楽しみか。

昨日の友人宅で、あまりにきれいに咲いていた花を写
真におさめた。こういう楽しみをもっている女の人は、
すてきだと思う。私もめざそう、団子より花!を。

にし

おたまじゃくし

一ヶ月ぶりに訪れた友人宅の周りの棚田で、近所の女の子が
おたまじゃくしをすくっていた。そのあと、近所のおばあち
ゃんに許可をもらって、今度は白くてふわふわのモリアオガ
エルの卵もとってきて見せてくれた。

そして、友人宅の庭では数々の花が咲き、虫が飛び、空は青
く、遠くの砂山では子供たちがきゃっきゃっと走り回ってい
る。気持ちのよい風が吹く玄関前のテラスに腰を下ろし、こ
れ以上、なにを望むものがあるだろう…と思っていたら、淹
れたての紅茶のカップを渡された。

ああ、極楽、極楽。

おたまじゃくし

そして別れ。

あっという間に別れのときがきた。
同じ地球にいれば、またいつかどこかで会えると約束して、
後姿を見送った。

若い彼女は、この一年弱の間に新しい世界で多くのことを
学び、成長していた。
そもそも彼女を紹介してくれた友人と、残念ながら私はつ
きあいがなくなってしまったのだが、彼女もその友人に対
して私と同様の気持ちを抱いていたことがわかり、ほっと
した。

悲しいけれど、人間の本質はなかなか変えられないものか
も。しかも、年をとればとるほど、それは難しくなるのだ
ろう。

八条口

再会

去年の夏に知り合ったドイツ人の友人が遊びに来てくれた。
日本での夏休みを終えたあと、イギリスで新たな勉強を始めた
彼女は、今回は自分の研究プロジェクトの一環で東京の街を一
週間ほど歩き回ったという。

人だらけで、どこまでもどこまでも建物しか見えない空間を休
休みなく歩き回って観察した疲れを、この週末で癒してもらお
う。遅いブランチは、丘の上のファームレストランのテラスで。
そして午後からは、山のふもとの大きな神社を散策して、私た
ち以外に観光客は皆無のお寺をゆっくりと見て回った。あまり
にのどかで、気持ちよくて、薬師如来の前で昼寝しそうになった。

お庭は小堀遠州作。そもそもは御所の建物を移築したという、
最高ランクの門跡寺院らしい。なのに、土曜の午後というのに
お客はいない。なんという贅沢。

最初にとても丁寧な説明をしてくれたおじさんが教えてくれた
言葉を心に刻んでお寺を後にした。
忘 己 利 他』。

しがいん