そこまで言って委員会(増刊号):原発について

ようやくテレビ番組も通常モードに戻り、昨日は「たかじんのそこまで言って委員会 増刊号」が放送された。その中で、異色の科学者(?)、中部大学の武田邦彦教授が原発について語っていた。おそらく関西以外では殆ど放送されないと思うので、その内容を文字に起こしてみた。取り急ぎ、前半のみ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日本の原子力発電所は、地震国日本でありながら、地震で倒れてもいいという設計に、もともとなっていた。今までは偶然にも、あまり震源地に近くないところだったので、まだよかったのですが、新潟の地震と今回の地震と、震度6くらいの地震がくると100%とは言いませんが相当部分が壊れると、今度のことでわかったということですね。

*これまで原発は安全に万全を期して、建設されていたのではないのか?

安全は殆ど関係なく作られるんですね。その一番典型的なのが、中部電力の浜岡原発。あれは東海地震の震央地―あまり広くないんですよ、大体50キロくらいしかない-ここが東海地震の中心ですよ、というところの真ん中に建てた。普通だったらね、東海地震みたいな巨大地震が起こるであろうと思われるところに原発を作るなんて、本当は辞めた方がいいわけですよ。原子力は、技術的には安全だけど、原子力を危険にしているのは人災だと、私はずっと言ってるんです。どうしてかと言うと、立地においても、運転や耐震基準においても、政治だとか利権が入ってきて、それを皆さん、日本人も目の当たりにしてるんですよ。実際、浜岡原発は震央地に建てられているわけですから、「おかしい、どうしてこういうことになったの?」と訊かなきゃいけないんですけどね。そうなってないんですね。

*さらに武田先生は2007年の新潟県中越沖地震の際、柏崎刈羽原子力発電所で起きたトラブルが地震対策を見直すきっかけだったのに…と後悔する。

だから、みんなマスコミが全部ごまかしてる。ごまかされたから、原発は地震で倒れないとまだ思っている。

*では一体何をごまかしたというのか?

ふたつ起こったんですね。ひとつは炉の中で何かがひっくり返って、放射線が少し漏れた。もうひとつは、原子力の建物の外で原子炉とは関係ないものが燃えて、黒煙をもくもくと上げた。で、なんと言ったといえば、「原子炉に関係ない建物が燃えたのはまずいけど、原子炉の安全には関係ありません。」これは嘘です。だって原子炉というのは、全部で機能していて、どこかが火事になっていいわけじゃない。耐震は、その耐震でやってなきゃいけない。ところが、その耐震では行われてないんですよ。要するに、付近の住民を守ろうとしているんじゃなくて、原子炉を守ろうとしているわけです。もうひとつ、変な理屈があって、「漏れたことは漏れたけど、人の健康には害がない」と言う。「いえ、あなたね、人の健康に害がなければ、漏れていいと説明していましたか?」ということ。「地震があっても、漏れません」と言ってるんだから。それが漏れたということを、少なくとも東電は説明していない、何が間違っていたのかを。「人の健康に害がなかったことは不幸中の幸いでした。だけども地震でこんなに簡単に放射線が漏れるとは、どこを我々は間違っていたのだろう?」ここを言わなきゃいけないのに、すり替えるんです。すり替えで、コロッっとやられちゃうんです。そういううまい言い訳がいっぱい用意されているんです。で、コロッとやられちゃうんです。

*では、なぜ安全がないがしろにされてしまっているのか?

そりゃ、保安院がいるからダメですよ。

*原子力安全保安院とはいったいどういう組織なのか?

もともと日本国は、原子力は大切で危ないので、大切だという方は原子力委員会がやりましょうと。昔は科学技術庁、今は内閣府。しかし原子力は危ないから、危ない方だけ見るところもないといけない。これは世界、どこでもそうですね。で、独立した機関として原子力安全委員会ができた。これが昔、科技庁で今、内閣府。これに委員長がいて、独立してるんですね。それぞれの違った見方からやる。そういうことでスタートしました。そうしますと、やっぱりややこしいわけです。原子力委員会は「やれ」と言うし、原子力安全委員会は「やるな」と言ったり、「これは気をつけろ」と言ったりするから。原子力委員会は推進派、原子力安全委員会は規制派。これでバランスをとるというのを、各国ともやっているわけです。ところが、原発も40発くらいになっちゃった。日常的にいちいち原子力委員会と原子力安全委員会にお伺い立てるのは面倒くさい、やっちゃえということで通産省に出来たのが、原子力安全保安院。そうなると電力会社は、安全委員とかは関係なく、保安院の了解をとって進める。日常的には保安院がやります。現実的に私もそういう仕事をして、なんかどっかに置かれたみたいなんです。力も強い、経産省だから。こっちは内閣府なんて、ぼやーっとしてる。それは多くのマスコミの人も知らない。もう原発やれやれどんどんという感じで。

*その原子力保安院が大きな影響力を持った結果、困った事態が起こったと武田先生は指摘する。

私はウラン濃縮研究所長というのをやってたわけです。そのときの経験ですが、ウラン濃縮研究所の中を改造したんです。ものすごく複雑な装置です。それを国に出した。国がそれを審査して、現場に来て、はんこ押して認めてくれた。その後、半年くらい経ったときでしたかね、僕が現場を見回ったら、一箇所だけ間違いがあったんですよ。何か事故があれば、ウランが海の方に出ることがわかったんです、その配管があると。普通は万が一でも出ないようになっている、もちろん。物理的に配管や溝がないんですよ。そんなことしてると、そこにいっちゃうから。万が一でもウランが海に流れないように完璧にしてるんです。ところが、間違った配管があったんですよ。それで僕が連絡して、「所長ですが、これがあると万一のときにウランが日向灘に出て迷惑かけちゃうから、これを撤去したい」と言ったら、なんと言ったと思う? 「いや、認可したものだから取れません」 それで僕は、「そんなこと言ったって、私のミスだから、謝りますので、取らせてください」と言ったら、「いや、国が認めたことだから正しいんだ」と。結局、中間に立つ人にこっそり聞いたら、「あなたが自分でやりなさいということだ」と。認められたものを法を犯して、勝手に改造しなさいと。役所は知らないよと。役所は事故が起こらなければどう言うか。「あれは所長が勝手にやったことだ」と。もし事故が起こったら、「運転がいかん」と。こういう体質なんですよ。これは現実に起こった話、私が体験したんだから。役人はウランが海に出ることについて、まったく関心がない。国民の健康を守ろうなんて、全然思ってないですよ。自分の責任を問われないためには、そんなの改造してもらっちゃ困る。もし僕が申請書を出すと、国の審査が間違ってたことになるから。

*ミスに気づかなかった自分たちの責任だと?

そうなんです。自分たちの責任と国民の安全とを比較すると、自分たちの身を守るほうが大切だという実例ですから、これ。だから、こんなこといつでも起こってるんですよ。僕に起こった例なんて、たいしたことない。もっとひどいのが、いくらでもあるわけですよ。だから、そのことがあるので、今度みたいなことが起こるし、いろいろみんながわからないと、こういうことが起こるんですね。だけどテレビで保安院の説明を聞いた多くの人が、おかしいと思ったんですよ。おかしいという感覚は何かと言うと、彼らは放射能が外に出ていても全然平気なんですよ。「私たちの責任じゃないですよ、私たちは完璧に仕事してるんですから。謝る必要なんてないですよ」と。

*東京電力の責任だと思ってる勢いですか?

そういうことです。だけど、通常、認可しているのはあそこですからね。津波に対して、これじゃダメだと言うのもあそこですから。だから本当は保安院に責任はある。「申し訳なかった、見通しが甘かった」と。

*さらに武田先生はあらゆる人たちの無責任さを指摘する。

今度は、地震学者はなんて言ったか。簡単ですよ。「今度は予想外に600メートルも崩壊して、連続しました。こういうことは私たちは考えていませんでした」と言うんですよ。「これは私たちの限界ですから」と。そうすると、地震学者は責任ないんですよ。それに基づいて作った建設会社も、責任ないんですよ。それに基づいて運転した方も責任ない。保安院も別に関係ない。それで私が言ったのは、「こういう体制でやってると、最終的に安全かどうかということは、誰が考えるんですか」と。国民にとって安全か、福島県の人にとって安全か、誰が考えるんですか? いないでしょ。だから私は、「地震学者の意見を参考にするのはいいけど、日本で起こった最大の地震、震度7くらいでも壊れないようにしといてもらわないと。地震学者が言ったから私は知りませんじゃ、ダメじゃないんですか」と安全委員会で発言したんです。基準部会で。詳しく言えば、安全委員会の地震指針の部会ですけど。それがいないんですよ。国民は絶対そう思ってませんよ。安全について考えるところがあると思ってる。地震があれば津波が来るんじゃないかとか、地震学者がいくらと言っても、もしかしたら間違うんじゃないかとか。もし事故が起こったときは、どうしたらいいのかとか、そういうことを考えるところがあるだろうと(思うでしょうが)、ないんです。

DSC02438

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です