映画『バンク・ジョブ』で知った英国の謎の強盗事件

ケーブルテレビの映画チャンネルで適当に「面白そうかな?」と思うものを録画しているのだが、その中から最近、観たのが2008年の英国映画『バンク・ジョブ』。いったいどういう類の物語なのか、まったく前提知識なく見始めたのだが、これは1971年9月11日にロンドンで実際に起きた銀行強盗事件を基にしていて、一応、「半分フィクションです」と断っているのだが、あとで調べてみたところ、かなり綿密な取材をして制作されているようで、意外と真実に近い物語なのかも…と思っている。

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映画では、まずロンドンで中古車店を営む主人公が知り合いから銀行強盗を持ちかけられる。ベイカーストリートロイズ銀行の警報装置が、取替え工事の期間だけ機能しなくなるので、その間に地下の貸金庫を狙おうと。そこで主人公は仲間を募り、銀行の二軒隣の空き店舗を借り、内装工事をしていると見せかけて、その店舗から銀行まで地下トンネルを掘る。

実はこの計画の黒幕は英国諜報部MI5なのだが、主人公はもちろんそんなことは知らない。MI5の目的は、ブラックパワーの指導者として有名なマルコムXに傾倒して、当時「マイケルX」と呼ばれていたトリニダード・トバゴ出身の似非活動家が貸金庫に保管していた英国王室関係者のスキャンダラスな写真を入手することだった。マイケルXは、実は麻薬の密輸など数々の犯罪を犯しながらも、その写真を脅しに使って、逮捕を免れてきていたのだ。

しかし主人公たちの一団がまさに強盗を実行に移そうという時、見張り役とのトランシーバーでのやりとりを偶然、近所の無線愛好家が聞きつけ、警察に通報。近隣のどこかの銀行が狙われていると調べて廻るのだが、危機一髪で強盗団はみつかることなく、貸金庫の数々の財宝を盗み出した。しかし…貸金庫に隠されていたのは、王室のスキャンダル写真だけでなく、政財界の大物たちのスキャンダル写真や、警察官への賄賂の記録など、表に出たら困る人たちがたくさんいたため、強盗団はプロの刺客に狙われることに。結局、主人公は王室の写真を返却することで逮捕を免れ、マイケルXトリニダード・トバゴで逮捕される。
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この強盗事件は、最初の数日間だけ報道されたものの、その後、ぱったりと報道がやみ、未解決のままとなっているそうだ。これは「D-note(D通告)」という、機密保持のため政府から報道機関への報道差し止めの通告がされたからだと言われている。事件当日にアマチュア無線家の通報を受けた警察も、当初は動きが鈍かったと言われているし、不審なことが多々あるらしい。

映画の中では、マイケルXが持っていたのはマーガレット王女(エリザベス女王の妹)のスキャンダラスな写真ということになっていて、それを受け取ったマウントバッテン卿が写真を見て、「なんておてんばな!」みたいなことを言うのである。マウントバッテン卿といえば、IRA爆破テロで暗殺されたけれど、葬儀には遺言により第二次世界大戦で戦った日本人の参列を拒否したのだとか。大英帝国の植民地を日本軍に次々と解放されたことを、よほど恨みに思っていらしたのだろうか!? また映画の最後でマイケルXの逮捕の場面が出てくるのだが、ここで明らかになる惨い事件は実際の出来事らしい。

しんどいエピソードを並べてしまったので、ちょっと楽しい映画のみどころも記しておくと、当時、革命運動家として有名だったマイケルXが実際に交流していたジョン・レノンオノ・ヨーコのそっくりさんが一瞬、出てきたりする。それから、私は気づかなかったのだが、当時、マーガレット王女と交流があったミック・ジャガー貸金庫の係りとして出演していたと知り、びっくり。また、裏社会のボス役を演じるのが、『名探偵ポワロ』役で有名なデヴィッド・スーシェだったのも意外。でもこの方、実は悪役もたくさん演じているのだとか。

この映画を見て、どこの国にも、未解決の謎の事件がいろいろあるんだなぁと思った次第。でも、英国王室といえば、ハリー王子全裸写真流出や、アンドルー王子少女買春疑惑など、さまざまなスキャンダルが続出済み。今だったら、こんな写真のために銀行強盗をやらせるなんてあり得ないかも…。

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