夫の勤務する寺で、オランダからのお客様をボランティアとして案内した。
天気にも恵まれ、紅葉もちょうど真っ盛りのよい一日となった。20年以上、
日本を度々訪れ、第二の故郷として愛してやまなかった亡きご主人を追悼
する奥様と、その息子さん夫婦のご一行だった。
案内が終わったと思ったら、今度は夫の前の上司の訃報が入る。季節が移
り変わり、年月が過ぎていくのを山の上で実感した。
中学・高校時代の私は、イギリスのアイドルバンドに夢中になり、世界各
地のファンと文通していた。雑誌や写真などもたくさん集めていたが、今
年の夏に実家に帰った際に、ようやくすべてを処分した。さすがにもう、
卒業だと。ところが、突然今になって、昔のペンパルからメールが届いた。
ネットを通じて、共通の知人から私の連絡先を知ったらしい。彼女はいま
だに同じバンドのファンとして、いろいろなものを集めているのだとか。
ずっと変わらない気持ちを持ち続けるマニア精神に驚愕しつつも、時間が
止まった世界に取り残されている彼女に悲しくもなった。
色づいた葉が落ちたら、春にはまた新芽が出て来る。