あと一月ほどで99歳となる私の父は、現在、実家近くの老人ホームで暮らしている。私たちも、なるべく顔を見に行くようにしているが、月に一度が精一杯。すでに父の兄弟や友人もみんな故人となっているし、もともと耳が遠い父は、今では記憶もあやふやで、以前のように会話はできないため、親戚も殆ど面会に来ない。
ところが、そんな父のもとに近所の従妹が何度も足を運んでくれているようだ。私より約10歳年上だが、いまだに独身。昔は美人だったけど、かなりの変わり者。心優しいのだが、何を考えているのかいまひとつわからない、不思議ちゃんだ。そんな彼女を昔は父も気にかけて、いろいろ世話をしていたようだが、ある時点で、「ありゃあ、ダメじゃ」と見切ったような言葉を発したことがある。
その不思議ちゃんの従妹から、連絡がきた。この間の父の日に、老人ホームを訪ねた際、久しぶりだったので、父にいろいろ話しかけ、かまってしまったらしい。(具体的に何をしたのだろう?)。それが気に入らなかったのか、父はとても丁寧に彼女にこう言ったのだという。
「ご苦労様です。もう結構です。」
この話に我が家は大爆笑! うちの父は非常に我慢強い性格だ。それに、私たちが訪ねて行っても、引き止めることもしないが、帰れと言うことも決してない。そんな父が、「もう結構」なんて、よっぽどのこと。それも、「ご苦労様です」と気配りをしながら・・・。
いや、父の気持ちはすっごくわかる。彼女に悪気はなくて、本当に親切心からいろいろやってくれるんだけど、それがありがた迷惑・・・という出来事がこれまで数限りなくあったんだもの。いやはや、本当にご苦労様でした。
*朝のコーヒーは息子が淹れるようになりました。