実家の電話に二日続けて、母が最初に入院していた病院
からの着信履歴が残っていた。夫によれば、関西の自宅
にも着信があったらしい。ただしメッセージはなし。
なので昨日、こちらから電話で問い合わせてみた。大規
模な救急病院なので、すぐには用件がわからず、一時間
ほど後に折り返し電話があった。母の5月分の入院費が未
払いだと。実は母の退院の日の朝、私は病棟の方から渡
された請求書をそのまま会計で支払って、転院先の病院
へと向かったのだが、それは6、7月の請求書だったらし
い。
その後、7月半ばに病院から未払い分があると連絡を受け、
私は病院に支払いに行った。ただし私は請求書を持って
いなかったので、会計の方が請求書のコピーに領収印を
押してくださった。
「いまこちらにヘルパーさんが支払に見えているんです
けど」と言われ、上記の事実を説明すると確認がとれた
らしく、「確かに支払はすんでいました」とのこと。
それよりも、なんでヘルパーさんが支払に行っているの
かが私にはわからず、訊ねてみると、私が留守だったか
らヘルパーさんに連絡したのだという。
母が入院中、何かの緊急事態が起きても遠方の私はすぐ
に病院に駆けつけられないからと、ヘルパーさんの連絡
先を病棟にも知らせておいたのだが、この方には母も私
も不信感を募らせ、転院を機に縁を切っていた。その方
がなぜ勝手に支払に…?
もやもやした気持ちのまま母の病室に行くと、そのヘル
パーさんがいた。「病院側から正規の請求書に領収印を
押したものを預ってきましたから、コピーは捨てておい
てくださいとのことです」と、領収書を渡された。そし
て「ここには○○さん(別のヘルパーさん)がいらして
るかと思って、私は今まで来なかったんですけど」と、
こちらの様子を伺うように言われたので、「はい、○○
さんにはとてもよくしていただいてます」と答えたら、
彼女はすぐに帰ってしまった。ホントは○○さんはヘル
パーさんとしてではなく、友人として時々母の顔を見に
来て、親切にしてくださっているのだが、彼女がなんと
なく収入源を求めて来ているような気配を感じたので、
「○○さんにお願いしています」ということにした。
病院は、どうして彼女に裸のままの領収書をそのまま渡
したのだろうか? あのとき、電話口の私に「ヘルパー
さんに領収書を渡しておきます」なんてひと言も言わな
かったのに。昨日、私が病院で彼女に会わなかったら、
どうなっていただろう? そんなことを家に帰ってから
も、悶々と考えてしまった。
それで今朝もう一度、病院に電話したことで、ようやく
事の全貌がなんとなくわかった。5月分の請求書は、ヘ
ルパーさんが5月末に受け取ったまま放置していたのだ。
そして今回、病院から「家族の方に連絡がとれないので、
伝えてもらえませんか?」と電話がかかると、「じゃあ、
私が払いに行きます」と、家族である私には一切連絡を
しないで勝手に病院に行き、請求書を出して支払をした。
(なので、昨日付けの領収印が押されている。)
が、その途中で別の係りの人が私と電話でやりとりをし
て、すでに支払が済んでいたことが判明したので、ヘル
パーさんに返金し、改めて私が支払に行った7月の日付
の領収印が横に押された。「この領収書はこちらで郵送
します」という係りの人に、ヘルパーさんは「私が持っ
て行きます」と言ったので、そのまま渡したらしい。だ
ってヘルパーさん本人が持ってきた請求書だから。自分
で支払までしたのだから、病院側は善意の人だと思って
いたようだ。
そもそも、なんで留守電にメッセージを残してくれなか
ったのかと病院に訊ねると、個人情報の関係で伝言を残
さない決まりなのだという。その説明が理解できず、
「個人情報というなら、契約の切れた赤の他人のヘルパ
ーさんに、家族の了承なく、正式な領収書を渡す方が問
題じゃないですか? 留守電に伝言を残すのが、どんな
個人情報の問題になるんですか?」と訊ねると、「いや、
過去にちょっとトラブルがあったので、こういうことに
…」とむにゃむにゃ。確かに、仁義なき戦いの地元だか
ら、怖い人がたくさんいるんだろうけどさ。それに、私
の携帯番号も病棟には知らせていたはずなんだけど。
それにしても、善意の人に思わせてしまったヘルパーさ
んはつくづく怖い。ちょうど今読んでいる『影響力の武
器』という本に書いてあった「返報性」の法則の実例を
見た思いだ。最初に(こちらが求めてもいない)親切や
プレゼントを押し付け、その後に(それを上回る)何か
を要求をすると、大半の人は「借りを返さなくては」と
いう思いから受け入れてしまう…というものだ。
ああ、こんなどうでもいい小さな出来事で、なんだかと
ってもいやな二日間を過ごしてしまった。ついでにきょ
うは20日のせいで、道路もお店も混んでいて、さんざん
だった。これくらいでイライラしてしまう私は、つくづ
く修行が足りないのですわ。とほほ。