もう30年以上前の私の「アメリカ・カナダを回る大学卒業旅行」の出発点は、ロサンジェルスだった。当時、ロサンジェルスにペンパルがいるにはいたが、それほど親しくなかったので、泊めてもらうことは考えていなかった。その頃、東京に住んでいたユダヤ系アメリカ人の友人(そもそもはユダヤ系カナダ人の友人の紹介で知り合ったのだが)がロサンジェルス出身だったので、ロサンジェルスの友人宅に私が泊めてもらえるよう手配してくれた。私の到着時に空港まで迎えに来てくれると聞いていたのだが、いざ到着してみると、迎えはおらず、しかもスーツケースも出てこない。間違えて別の空港に行ったみたいだから、みつかったら連絡すると言われ、宿泊先の住所を知らせ、航空会社のお泊りセットをもらって、ひとり空港を出た。
宿泊先の住所(ハリウッドのどこか)は持っていたので、そちら方面に行くバスに乗った。大柄の黒人の運転手さんに行き先を言って、それらしいところで降りて、だだっ広い道路を渡り、なんとか目的の家をみつけた。今思うと、よく見つけられたな~と感心するけど、よく考えたら、スーツケースが行方不明になって助かったのだ。もし大きなスーツケースを引きずりながら移動していたら、大変だったはずだし、下手すると泥棒に狙われたかも知れない。(スーツケースはその翌日だったか、航空会社が届けてくれた。間違えてラスベガスまで行っていたらしい。)
到着した家の呼び鈴を押すと、感じのいい小柄の女性が出てきた。空港に迎えに来るはずだった東京の友人の友人は留守で、彼女によると、「彼はいい加減だから…」とのこと。そのシェアハウスには3人の住人がいて、もうひとりはBBC記者のイギリス人で、取材で留守にしている間、彼の部屋を使っていいということだった。赤の他人の部屋を留守中に使っていいのか、少し気が引けたが、趣味のいい居心地のいい部屋で、なんと赤いウォーターベッドがあった。ウォーターベッドに寝るのは初めてで、とても不思議な体験だった。
結局、車もないので、ろくな観光もできず、家でのんびりしていたのだが、共用のトイレにシンプルマインズのボーカル、ジム・カーのモノクロ写真が飾ってあるのを発見。先ほどの女性に、「あのジム・カーの写真、素敵ですね」と話したら、あれは自分が撮影したのだと喜んで話し始めた。彼女はしばらくジム・カーと付き合っていたという。私はシンプルマインズが大好きだったので、興味津々で彼女の話に耳を傾けた。
それをきっかけに私たちは仲良くなり、当時、定職に就いていなかった彼女が車で私をあちこちに案内してくれた。あのハリウッドのグリフィス天文台や夜のライヴハウスにも。彼女は戦時中にドイツからアメリカに渡った映画監督のお父さんと、イタリアからアメリカに渡ったお母さんの下、ハリウッド近辺で生まれ育ったそうだ。今でも忘れられないお父さんからの誕生日プレゼントは、ポニーだったという。
その後、彼女は音楽を志してロンドンに渡り、イギリス人の彼と結婚し、今もロンドンに暮らしている。そもそもハリウッドの家を紹介してくれた友人とは、いつのまにか音信不通になったけれど、この彼女と私は今も友達だ。彼女がロンドンに渡って以降、何度もロンドンの家に泊めてもらった。あの時、シンプルマインズの話をしなかったら、この友情も芽生えていなかったかも知れない。
ちなみに、私がハリウッドのその家を離れる時、彼女が私のために大音量でシンプルマインズの曲を流してくれたことが忘れられない。(↓私が一番好きだった曲『さらば夏の日』)
Someone Somewhere in Summertime by Simple Minds
(アルバム『New Gold Dream(81-82-83-84)』も傑作! 邦題も『黄金伝説』と洒落ていた!!)
ほんと素敵な思い出ですね。
自分の体験ではないですが、とてもリアルに感じられるお話です。音楽と共に在る思い出はすごく情景や匂い、感触とか色とか立体感がある様に思います。懐かしさや思い出は、個々人のものですが、音楽の様に共有できるものだと感じました。
その音楽がSimple Mindsのこのアルバムなのがすごく嬉しく思いました。
ほんとにどこまでも、いつまでも美しいアルバムだと思います。
またデペッシュの話もしましょう。よろしくお願いします。jamesも好きですよ。車でよく聞きます。伸びのあるサウンドと声で、高原や山岳を走るとまるでpvの中にいる様な錯覚を感じられるので。
コメント、ありがとうございます!
jamesもお好きとは、嬉しい!!!
本当にいつかいろいろお話できたら楽しいだろうなぁ。
昔の懐かしい思い出がいろいろと蘇ってきそうです。
(初来日のMorrisseyに偶然、遭遇して記念撮影したことも!)
隷月さんの音楽にまつわる思い出話も聞いてみたいです!!
そうですかMorrissyに。思い出がとてもダイレクトで直接音楽と結びついておられますね。お仕事柄、ザスミスの歌詞の意味なんかも直に感じながら音楽が聞けるのはほんと羨ましいです。
私の音楽の思い出は、ほとんどが情景の様なもので、1度仕事でイタリアやフランス、イギリスに行きましたが、イタリアではユーリズミックスのhere comes the rain againが。フランスではデペッシュモード のpeople are people が。イギリスではシンプルマインズのBelfast childが何故かラジオや店のBGM でしょうか、よくかかっていました。リリース時期は全部違うと思うのですが、日本では街から聴こえてくる事はまず無いので嬉しかったです。
いつかお会いできればと思います。山の中でして
アウトドアの中のインドア派 笑 なんです。
隷月さんのヨーロッパ各地での音楽の思い出、美しいPVのようですね。情景と音楽がぴったりマッチしていそうで。
日本の普段の生活でも、山の中をドライブしながらの音楽体験、すてきでしょうね。
私も一時期、山の中で暮らしていたので、ドライブ用の音楽をたくさん用意していました。
ほんとにいつか直接、お話できたらいいですね。
なんだかいろいろ思い出してきたので、近いうちに記事をアップできたらと思ってます。