きょうは父の96歳の誕生日。朝、近所の評判のお店で買ったイチゴのショートケーキをこっそり持ち込み、父に食べさせた。(食中毒などを懸念して、ホントは食べ物の持ち込みは禁止なのだが)。施設の方によると、「朝から、きょうは誕生日と自分で言っておられましたよ」とのこと。
とはいえ、このところの父はおとぎ話の世界の住人になっていることが多い。「人間と犬が一緒に寝ている」とか、「人間と魚が一緒に暮らしている」とか…ダイニングルームの景色がそんな風に見えるらしいのだ。昨日は、新しく入所した方のことを、「あの人は着物を着とると立派じゃけど、着物を脱ぐとカエルなんよ」と言うので、私と息子は吹き出してしまった。
で、きょうもケーキを食べた後で、「ここの人たちは人間の格好をしとるが、本当は虫じゃ。虫なのに、日本語を喋りよる」と言い出すので、またも大笑い。いや、本人はいたって真剣なんだけど。
その後、買ったばかりの『古事記と日本書紀』という本を開いたところ…。
古事記によれば、まず天の中心に原初の神が出現。次に二柱のムスヒの神が出現。これは「苔むす」のムスで、生命の出現を意味する。「虫」は、このムスが名詞化した言葉。マムシという言葉があるように、古代ではヘビもムシ族の一員で、そのヘビの血を受けた子孫が倭の王になった。初代天皇の妻は蛇神の娘だったのだ。「ムスメ、ムスコ」として生を受ける私たちはみなムシ族の一員。草と虫と人がつながって生きている世界を古事記は表している…。
と書かれているではないか。「父が言っていることも、まんざら嘘ではないのかも!?」とムスコと感心した次第。このことを早速、夫に報告したら、「う~ん、それは確かにムシできんな」とのこと。あ~あ。