幻のスコットランドでのホームステイ

昨日の話に出てきた美術の先生、私は恨んではいない。中1と高1と二度も担任してもらってお世話になったし、おととしの同窓会でも久々に再会して、楽しくお喋りもした。私は睨まれていたわけでもないし、先生は何気なくコメントしただけだと思う。

大学で英語を専攻したわけでもなく、英語関係の資格があるわけでもない私にとって、英語の原点は中学時代に夢中になったスコットランドのアイドルバンドだった。歌詞カードを見ながら何度もレコードを聞いたり、紀伊国屋書店の洋書コーナーに行って、海外のアイドル雑誌を眺めたり、やがては欧米のファンと文通をすることが、いつのまにか私の英語の勉強になっていた。

高校に進学した頃、確かNHKラジオの英語講座のテキストに、夏休みのホームステイツアーの広告が出ていた。行き先はたいていアメリカかイギリス(イングランド)なのに、ひとつだけ「スコットランドでホームステイ」という広告をみつけ、私は大興奮。だって、どんなに探しても、スコットランドでのホームステイなんて、今まで見たことがなかったからだ。

両親はかなり無理をして私を中学から私学に行かせているのは十分承知していたけれど、私はどうしてもスコットランドに行ってみたくて、母への説得を試みた。「いま15歳のこの夏に一ヶ月、英語の生活を体験することは必ず私の人生に大きな影響をもたらす。20歳や30歳ではなく、いまこの若い年に行くからこそ、意味があるのだ・・・」みたいなことを、何度も何度も話したと思う。

今でも感謝しても仕切れないのだけど、とうとう両親は許可してくれた。どうやら母が伯母からお金を借りてくれたらしい。同じバンドの大ファンの同級生も両親を説得していたが、彼女はとうとう許可が下りなかった。彼女の家は裕福だったが、彼女がかなり悪い点のテストをいくつも隠していたことが発覚したりして、両親の信頼を得られなかったのだと思う。一緒にスコットランドに行こうと話していたのに、結局、私はひとりで参加することになった。

ところが・・・申し込みをしたあとで、ツアー会社から企画がキャンセルになったと連絡がきた。スコットランドでのホームステイを申し込んだのが、私を入れて2名しかおらず、代わりにイングランドのツアーに参加して欲しいとのことだった。「スコットランドに行きたかったのに・・・」と力説したら、「ホームステイは3週間で、最後の1週間は自由旅行ができるので、そのときに行かれたらどうですか?」とのこと。しぶしぶ了承したが、出発前のミーティングで「高校生にひとりで自由旅行をさせるわけにはいけません」と言われ、これまたしぶしぶ大学生グループと共に旅行することになった。ただし、ホームステイ期間の週末に、日本人みんなでスコットランド旅行をするという約束だった。

結果的には、イングランドにもスコットランドにも行けて、大学生に連れられてパリやミュンヘンやインターラーケンまで回って、充実した夏休みを過ごせたことをありがたく思う。わずか数日のスコットランド滞在の間に、憧れのアイドルの実家を訪ね、彼のご両親にも会えたので、私としては夢のような旅行だった。

で、最初の美術の先生の話に戻るのだけど、2学期の最初のホームルームの時間だったのだろうか、先生がいきなり私に、「イギリスはどうだった? みんなに話を聞かせてちょうだい」と言い出した。それで私は教壇に立って、イギリスでの体験を話したのだけど、話し出すと止まらない私のこと、たぶん授業時間をほぼ使い切ったのではないだろうか。なんでそんなことをさせられたのか、よくわからないのだが、よくも悪くも私にとっては忘れられない美術の先生なのだった。

ところで、きょうはちょっとした用事のために、山の家に戻り、それから別のお山のお寺に行った。いつ来ても、この山に入ると、神妙な不思議な気持ちになる。実はここ、私と夫が初めて出会った場所で、私たち夫婦の原点なのでした。

*山からの眺め
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