医療難民

来月、母が転院する予定の病院に紹介状を持って行った。
短時間で終わるだろうと思っていたら、副院長からゆうに
40分以上は説明があった。パソコンの画面を使って、現在
の医療・介護制度の説明から始まり、疑問だらけのその制
度の中で、この病院はどういう信念で、どういう方針で患
者を受け入れているかを説明され、それを納得した上で手
続きをしてください、とのことだった。

数年前から厚労省が、医療費を削減するため(その分、介
護費につけ代えるだけなのだが)、いわゆる「社会的入院」
患者を減らす方針を打ち出した。さほどの医療が必要のな
い高齢者を、病院ではなく自宅か介護施設へ誘導する政策
らしいが、国が決めた線引きでは実は医療を必要とする患
者(つまり、介護施設が受け入れを拒むような高齢者)ま
でが病院を追い出され、行き場のない「医療難民」になる
という。

こういう実態を現場の医師たちは、みな疑問に思っている
らしい。少なくとも、この副院長、そして現在の母の主治
医も。そして病院にも国は目的別のカテゴリー分けをして、
国の求める基準を満たさないと、そのカテゴリーをはずさ
れるらしい。なので、「本来なら現在の主治医の先生は、
医療者として最後まできちんとお母さんのことを診たいと
思っていらっしゃるでしょうが、制度として無理なのです」
ということらしい。

幸いなことに、現在の病院と、この病院は互いに連携して、
密な連絡をとりあっているとのこと。母が退院できる状態
になれば、責任をもって受け入れ体制のある施設を捜しま
すとも言われた。

矛盾だらけの制度の中でも、信念をもって働いている方々
がいらっしゃるお陰で、なんとかこの国の医療・介護制度
はもっているのか…と複雑な気持ちだ。母はラッキーなこ
とに医療難民にならずにすみそうだけど。

ちょっと離れた町にある病院まで、なんと友人が車で迎え
に来てくれた。ちょうど彼女も帰省中で、きょうは時間が
あるからと。去年、お母さんを看取った彼女も、医療制度
の矛盾を訴えていた。(苦しんでいたお母さんが退院させ
られ、次の病院は自力で探さねばならなかったそうだ。)

この国のあり方に憤慨しながらも、まっとうな人たち、温
かい人たちに会えて、心が救われた一日だった。ありがとう!

*新球場(新幹線から)
23jun09

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