ダマスカス(シリア)のおじさま

私が入院するほどのストレスを感じていた外での一年間の仕事も悪いことだけではなかった。上司には恵まれなかったけど、いい出会いもいくつかあったからだ。中でも、一番インパクトがあったのが、シリアのおじさまだ。内戦中の国で、一応、安全と思われる地域にお住まいのようだが、それでも財産の多くを失い、この先どうなるかわからない状況の中、希望を失わず、国の平和のために祈り続けていらっしゃる。英国の大学で学ばれたので英語ができるのはもちろんだが、高齢にも関わらず、デジタル機器を駆使して、メールやメッセージアプリで連絡をくださる。本来であれば、用件のみのメールのやりとりだけで終わるはずが、一言、二言の雑談的なフレーズが加わるようになり、いつのまにかお互いに親しみを感じていた。まるで父と娘のような感じで。

おじさまは、個人的な話やシリアの状況についても教えてくださるけれど、政治的な発言は一切なし。そして、しばしばコーランの言葉を引用して、絶えず神に祈っている。お陰で私はリアルなイスラムの世界を、初めて垣間見ている気分。イスラムの祈りの歌のビデオを見せてもらったり、メッセージアプリのお陰で、日本にいながら異文化体験ができる!

仕事上の関係はもうないにも関わらず、今も時々メッセージを送ってくださるおじさま。私が入院したときも、心配して、何度もメッセージをくださった。日本にいらしたときには、ナッツとクッキーと、それからドレスをお土産に持って来てくださった。ただでさえ大変なときに、わざわざこんなにたくさんのお土産を・・・と言葉もなかった。

ここしばらく、シリアでは雨も雪もほとんど降らず、このままでは干ばつとなり、作物も収穫できないのではないかと心配されているそうだ。日本では降雪量が多すぎて逆に大変なことになっているというのに。うまい具合に、雪雲・雨雲が散らばってくれたらいいのに・・・。
おじさまは、きょうも神に祈っているはずだ。

いまの私の夢のひとつは、シリアまでおじさまに会いに行くこと。おじさまが元気なうちにシリアが平和になることを、私も切に祈っている。

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