学ラン(と男子校)の効用

この夏、関西では今までにない酷暑が続いた。

隣市の高校に電車通学しているうちの息子は、異常に暑い日が続くというのに、7月に入ってもかたくなに冬服を着続けた。息子が通う男子校の制服は学ランなのだが、夏は学ランを脱いで、半袖(または長袖)のシャツ姿となる。中学生は素直に半袖シャツの子が多いようだが、高校生になると長袖シャツの袖をまくって着る人が多い気配。ところが、うちの息子は毎年、なかなか学ランを脱がないのだ。酷暑の今年も、相変わらず学ランを脱がないので、熱中症になるんじゃないかと心配していたのだが、本人に言わせると、「電車も学校も冷房がきいてるから」とのこと。しかも、高校生男子は冷房をかなり低い温度に設定するのだとか。

この夏、関西は酷暑の上に、何度も豪雨に見舞われた。大阪北部地震もあったし、地震や豪雨で広範囲に電車が止まることが何度もあり、そのたびに私が急遽、車で息子を迎えに行った。ところが息子はいまどきの高校生には珍しく(!?)スマホを持っていないので(というか、欲しがらないので)、こちらから連絡不可能なのだ。学校の公衆電話から突然、「電車が止まっているらしい」などと連絡が入ると、待ち合わせ場所を指定して迎えに行くしかない。

西日本豪雨の日も、お昼すぎに息子から電話が入り、授業が終わる頃には電車が運休になる見通しだというので、私は学校近くの喫茶店で待機することにした。その後、学校から各学年の授業終了時刻が書かれた一斉メールが届き、全員授業が終わり次第、部活なしで下校させるとのことだった。あの日の豪雨はすさまじく、いつもの山道は通行止めとなっていたので、私は市街地のルートで早めに迎えに行ったのだが、授業終了時刻を過ぎても、息子は姿を現さない。15分過ぎて、ちょっと心配になり、学校の前まで行くと、出口からちらほらと生徒が出てくる。まだ少し残っている子がいるようだけど…それにしても、息子は出て来ない。さすがに心配になってきて、学校の事務所で確認してもらおうかと正面玄関に向かっていたら、建物の奥の方で何人かの生徒が喋りながら歩いている姿が見えた。その中にひとりだけ、学ランがいるではないか! よかった、息子だ! そう、この時期に学ランを着ている生徒は、ほかにはいないだろう。

このとき初めて、「学ラン着てくれていて、よかった」と思った次第。夏に学ランを着ていると、「どこにいるかすぐわかる!」という効用があったのだ。本人に言わせると、学ランの効用は「内側を含め、ポケットがたくさんあることによる機能性」であるらしい。なので、7月も半ばを過ぎ、ハンパない酷暑が続いていた頃、「きょうこそ、学ラン脱いだら?」と薦める私に、息子は「かなり暑くなってきたけど、ポケットがないと困るしなぁ」とブツブツ言いながら悩んだ挙句に学ランを着て出かけていたのである。そして息子がようやく学ランを脱いだのは、なんと終業式の日であった。その前日が、あまりに暑くてマジでやばかったらしい。

それにしても…「学校でお前以外にまだ学ランの人、いたの?」と聞いたら、「さぁ、少なくとも同じ学年にはいなかったと思うよ」との答え。「じゃあ、きっと変人だと思われてるね」と言うと、「大丈夫。いろんなカテゴリーの変人がたくさんいる中の一種類だから」とニヤリ。ああ、これぞ男子校! 楽しいはずだよね。

ちなみに息子は、散髪されると「耳元がくすぐったくて耐えられない」というお子ちゃまな理由から、髪をなかなか切りに行こうとしない。今回も2月に切ったきりで、かなり伸びている。校則もゆるい男子校ゆえ、どんなひどい髪でも、誰も何も言わないのだろうが、「見ているだけでウザいんだよ!!こら、息子っ!! お前はロッチになりたいんか!?」と、母は毎日、心の中で叫んでいる。

ところで「学ラン」とは、江戸時代に洋服のことを「蘭服」と読んでいたことから、「学生用の蘭服」から「学ラン」になったのだとか。

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