『成功の実現』中村天風述


顔面麻痺で入院した直後は、目薬が手放せなかったくらいで、読書をする余裕はなかった。その後も、ステロイドの点滴のせいで逆に身体が弱ったのか、読書をする元気がなかった。入院後、しばらくして、ようやく夫に持ってきてもらっていた大量の本を読み始めたのだが、その中でも一番役に立ったのが中村天風のこの分厚い本だ。中村天風述となっているように、これは天風先生の10回にわたる講演会をまとめたもののようだ。

1876年(明治9年)生まれの中村天風氏は華族の出で、小さいときから武術や英語に長け、今で言う軍事スパイとして日露戦争時に活躍。その後、不治の病を治すためアメリカに行き、コロンビア大学で医学を学び、さらにヨーロッパに渡り、それでも病気はよくならず、日本に帰国する途上のエジプトで出会ったヨガの達人についてヒマラヤ山麓で修行をして、悟入天地を拓いた。日本に初めてヨガを伝えた人と言われている。帰国後、実業家として成功したにも関わらず、43歳で突然、地位も財産も投げ出して、救世済民のため辻説法を始めた。その人生哲学に各界の重鎮初め、さまざまな人が感銘を受け、天風氏が自ら創設した公益法人「天風会」は現在も全国で活動を続けている。天風氏は、1968年(昭和43年)、護国寺内に天風会館が落成した年に92歳で亡くなった。

この1万円以上する本をなぜ持っているかというと、ずっと以前に夫が仕事の関係で天風会の方と知り合い、それから何年か後に、その方がわざわざ夫の職場までこの本を届けて下さったから。それを私が読み始めたのだが、分厚くて重かったので、読みかけのまま放置していたのを、「病気になった今こそ!」と思い出し、「これだけは病室に持って来てほしい」と私が夫に頼んでいたのだ。

そして、それは正解だった。病気の時だからこそ、すべての言葉が身体の芯まで沁みこんでくる。今だからこそ、心底、理解したい、吸収したいという思いで一字一句を読み続けた。講演録なので、天風先生の時にべらんめぇ調の話しぶりが非常に愉快! 明治の人の話し方って、こんなだったのか~という面白さもある。とにかく、すべてにおいてなにがなんでも前向きに!というのが天風先生の哲学の基本なので、どのお話も明るくて、思わずぷっと笑ってしまう。

しかも天風先生が教えて下さるのは考え方だけではない。身体を健康に保つための簡単な呼吸法など、具体的な実践方法も説明してある。私も早速、病室でやってみた。

それももちろん素晴らしいのだが、何より一番面白いのが、天風先生の身の上話! まるで壮大な大河ドラマを見ているかのような波乱万丈の人生! 「本当に!?」と思うような驚くエピソードばかり。多少、ご自分で誇張されている部分もあるかも知れないけど、それを差し引いたとしても、あまりにドラマティックて引き込まれます。昔の人って、スケールが大きいなあ。天風先生の交友関係もなかなかすごいものがあります。

未だに大勢の人が天風哲学や健康法に心酔しているのも納得の1冊。生涯、我が家の宝とします!

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