痔の手術ー追記

痔の手術のあと、すぐに病院に来てくれなかった夫のことをいまだに恨んでいると12月18日の日記に記した。当時、小学生だった息子を優先するのは当然なのに、なんでそこまで…と自分でも不思議だったのだが、ふと遠い過去の記憶が蘇って、腑に落ちた。

そもそもは、痔の手術で初めて脊髄麻酔をすることに不安を感じていたのだが、実はそれよりずっと昔に私の潜在意識に「痔の手術は怖い」とインプットされていたことに気がついた。

それは東京でバリバリ働いていた20代の頃の話。職業柄、回りの先輩方には痔持ちが多かったが、私はまだ痔とは無縁の頃。職場では、いくつかの取引先の担当者と毎日のように業務連絡をして、たまに雑談もしていたのだが、ある日、ひとりの担当者がお休みしていた。いつもなら、前日に「明日はお休みします」と断りを入れる丁寧な人なのに、その日は突然、別の人が出てきて、「○○は、2日ほどお休みしますので、私が代わりに担当します」と言われたのだ。知らない人なので、特に雑談することもなく業務連絡に徹していたのだが、2日過ぎても、3日過ぎても、4日過ぎても、その人が担当のまま。いったいどうなっているんだろう!?と訊いてみたら、その○○さんは亡くなっていたのだ。

当時、私と同じく20代の○○さんは、痔の手術のためお休みをしていたという。理由が理由だけに、取引先には何も言わずにお休みしていたらしい。痔の手術自体は成功したのだが、その夜、入院先の病院で持病の喘息の発作が起き、亡くなったという。同僚の方は詳しく話してくれなかったが、彼が喘息持ちということを病院側がちゃんと認識していなかったのだろう。普通に、迅速に対応していれば、彼は元気に退院していたはず。今思えば、訴訟になってもおかしくないケースだったのかも…と思うが、よくわからない。

代わりの担当者は顔すら知らない人だったし、「痔」の手術ということで、それ以上、突っ込んで話を聞くことができなかったのだが、あっけなくいなくなってしまった担当者さんの話は、けっこう衝撃的だった。

その後、痔の手術を経験した私だから言えるのだけど、脊髄麻酔がまだ切れていないうちに喘息の発作が起きたのだとしたら、いつも使う薬などを手元に置いていたとしても、彼は手を動かせなかっただろう。回りに誰かいれば、なんとでもなるけど、ナースコールだって押せないのだから、どんなに苦しい思い、無念な思いをしたことだろう。

彼が元気な頃、「自分は喘息持ちなんで、水泳をやって、鍛えているんですよ」と打ち明けてくれたことがあった。そうやって前向きに健康になろうと生きてきた若い青年が、なんともないと思われた手術の夜にひとりで発作に苦しんで亡くなったなんて、あまりに可哀想だ…。この情報が、私の脳にしっかりインプットされていたのだと思う。

だから、誰もいない病室で、麻酔のせいで身体が動かせない状況でひとり過ごす時間が恐怖だったのだ。 
by 鳩胸厚子

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